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#2 我らの正義を後世に伝えよ

エロアニメの神様
08 /26 2021
【神様が見えるヒト】賀島晴史郎さんは
何と、エロアニメの
シナリオライターだそうです。

賀島さんは私を
に連れていきました。
ここは賀島さんがお気に入りの店とか。

 「……前は秋葉原店に寄ることが
 多かったんだけどね、
 閉店しちゃったから……」

私はヒトのように飲食ができないので、
賀島さんが
水出しアイスコーヒーを飲んでいる前で
フワフワと宙に浮いていました。
ヒトとお話をするなんて
勿論初めての経験です。

 「……エロアニメの神様かー、
 長いことこの業界に居るけど
 初めて聞いたなー」
「申し訳ありません、
 私はまだ生まれたばかりでして」
「神様が見えるのって、
 俺がエロアニメの
 シナリオライターだからかな?」 
「多分そうだと思いますけど……」

先刻、
でお会いした時、
賀島さんはこう仰っていました。 

 「……お姉ちゃん
 こんなとこで何やってるの?」
 「えっ!? あ、あのっ……私ですか?」
 「……いや一人しかいないじゃない
 お姉ちゃん、一体何者なのよ?」

ところが実は、
私の隣にはエロマンガの神様の三人が
ご一緒だったのです。 

賀島さんは
全ての神様が見えるわけではなく、
私だけを認識できるようでした。

 「でも神様が付いててくれるってのは、
 エロアニメ業界にとっちゃ
 有難い話だなー。
 なんかご利益とかあんのかね?
 例えば凄いヒット作が出るとかさ」
 「いえいえそんな、とんでもない。
 私たちはヒトの世界に
 ほとんど干渉できません。
 できることと言ったら、
 そうですね……」

私は周りを見回して、
賀島さんのスマホに目をつけました。 

「なに?……」
「ではではでは……
 いきますよ~……」

私が念を集中すると、
スマホはテーブルの上で
くるりと向きを変えました。
指紋センサーが
私の方を向いていたので、
賀島さんから見て
正しい向きに戻した格好です。 
たったこれだけのことでも、
私はもう息が上がってしまいます。

 「今の私にできるのは……
 これぐらいが精一杯なのです」

改めて考えてみると、
こうしてヒトとお話できることの方が
余程凄いのではないかと思えます。 

 「なるほど……
 しかしそうなると 神様ってのは
 一体何の為に存在してるの?」

 「私たち神は、ヒトの思いが
 結晶化した存在なのです」
 「思い?」
 「エロアニメを観ているお客さんや、
 賀島さんのようなスタッフさん、
 先刻のラムタラさんのような店舗さん
 エロアニメに関わっている
 様々なヒトの思いが
 少しずつ積み重なって、
 結晶化したのが私たち神なのですよ」
 「……ん~……今一つピンと来ないなー」
 「ではでは、言い方を変えましょうか。
 私は言わば、
 トロフィーのような存在なのです」
 「トロフィー?」

「エロアニメがこの世に生まれて、

 大勢のヒトの思いを集めて、

 この世界に認められたという

 確かな証とも言えますね。

 表彰されてトロフィーを頂くのは

 とても名誉なことですけど、

 トロフィーそのものが

 何かの役に立つ

 というわけではないでしょう?」 

「……まあ、確かにそうかな」

「こうして知り合えたのも

 何かのご縁です。

 賀島さんは

 ライターさんなのですし、

 エロアニメの神様が

 生まれたということを、

 エロアニメが

 世界に認められたということを

 誇りに思って頂けたら

 私は何より嬉しいです」 


賀島さんは

嬉しそうに笑って言いました。 

「……なるほど、さすが神様だ。

 良いこと言うじゃないか」 

「ありがとうございます」


 「で、このあと神様はどうするの?

 アキバにずっといるわけ?」 

「いえいえ、

 エロアニメに関わるヒトや

 出来事を追いかけて、

 あちこち行ってみようと思います」 

「私たちは

 ヒトの世に触れる事はできませんが

 質量が無い分、どこにでも行って

 何でも見聞きできるのです。

 時間もたっぷりありますから」

 「神様ってのはやっぱ不老不死なの?」

 「不老不死と言えるかどうか

 よく分かりませんが

 エロアニメがこの世界にある限り、

 私の存在も消えることがありません」


 「そっか……じゃあ神様にはなるべく

 長生きしてもらわなくちゃな」 

「はい」


『何とぞ生きて、

 我らの正義を後世に伝えよ』


「?……」

後になって知ったのですが、

これは2009年の

大河ドラマ『天地人』

39話「三成の遺言」の一節で、

関ヶ原の戦いに敗れて

投獄された石田三成が、

盟友・直江兼続に言付けた

クライマックスの台詞です。 

 




 

賀島さんは

大河ドラマを欠かさずに観るのが

長年の習慣で、

特に気に入った作品は

全話録画して保存されているそうです。 


 「ところで神様」 

「はい?」 

「さっきから店の人に

 チラチラ見られてる気がするけど、

 やっぱり他の人にも

 神様が見えてるんじゃないの?」

 「あー……多分違うと思います。

 私の姿や声は

 他のヒトには認識できていないので、

 賀島さんが

 ずっと独り言を喋っている

 おかしなヒトだと

 思われているのかと……」 

「……それは困るな

 どうすりゃいい?」

 「そもそも私は

 声を発しているわけではなく

 頭に直接思念を送っているだけです。

 ですから賀島さんも頭の中で

 言葉を思い浮かべるだけで

 私に伝わると思います」

 (……こんな感じかな?

 どう?……聞こえてる?) 

「はい、ちゃんと伝わってますよ」 


それから程なくして、

私たちはルノアールから出ました。

秋葉原駅へと向かう道すがら、

私はちょっと気になっていたことを

賀島さんに聞いてみました。 


 「賀島さんは今日ラムタラさんに

 何を買いに来たんですか?

 もしかしたら私、

 お買い物の邪魔をしましたか?」

(いやいや、そうじゃないんだよ。

 打ち合わせの後、時間が余ったから

 アキバに寄っただけ) 

「そうなんですか」 

(あそこはさ、

 エロアニメの品揃えが多いんだよ。

 やっぱこう、

 自分が関わった作品が

 店頭に並んでるのってさ……

 なんか嬉しいじゃない?)


なるほど分かりました。

例え神とヒトの違いはあっても、

この方は……賀島さんは

エロアニメを深く深く

愛しておられるようです。

私も何だか

とても嬉しい気分になりました。


これが私が生まれた日の出来事です。

これも後になって知ったのですが、

この日ラムタラさんで

私が初めて出会ったお客様。

あの方が手にしていた作品は、

実は賀島さんが関わった

作品なのだそうです。

もうじき続巻が

発売されるとのことで、

私からもご紹介させていただきますね。

 

佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
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