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#27 実は11本あります

エロアニメの神様
11 /30 2022
12月1日【映画の日】だそうです。

1896年、日本で初めて映画が一般に
公開されたことを記念して、
1956年に制定された記念日とか。

この日は全国一律に映画館の入場料
がサービス価格になるそうです。
映画鑑賞がご趣味の賀島さんは
さぞお喜びのことと思います。

「映画鑑賞が趣味って言っても
 結婚して独立して引っ越して
 ここ5年くらいの話だよ。
 学生時代や一般作のライター
 だった頃はお金が無かったし
 メーカーに居た時期とか子供が
 小さい頃は時間が無かったし」
「なるほど」

「後は何と言っても、
 映画を観る環境が昔に比べて
 劇的に良くなったからね
「具体的にどのような点が
 改善されたのでしょう?」

「そうねぇ……やっぱ昔に比べると
 シネコンが広まったのは
 大きいんじゃないかな?
 イオンシネマとかTOHOシネマズ
 みたいにショッピングモールの
 テナントに入ってたりすると
 利用しやすいからね」
「私が小学生の頃は、一番近い映画館
 でも電車で三駅かかってさ。
 ちょっとマイナーな映画だと
 都内まで出なきゃいけなくてねぇ。
 そうなるとあんまり映画に行こう
 って気にならないんだわ」

シネコンとは
シネマコンプレックスの略で
同一の施設に複数のスクリーンが
ある映画館のことだそうです。

「あと、これもシネコンの効果かな?
 座席が全席指定になって、
 ネットやアプリで予約できるよう
 になったのがありがたいよ
 しかも当日分だけじゃなくて
 二日前から予約できるからね」
「ネットがない時代は
 座席の予約どころか
 観たい映画がどこで上映してるか
 何時から上映してるかだって
 調べるのが面倒でさ。
 新聞にも全部は載ってないし、
 『ぴあ』とか『東京ウォーカー
 をわざわざ買ったりしてたよ。
 ああいう雑誌は、立ち読み不可の
 場合が多かったから」
「まあ昔みたいに気に入った映画を
 続けて何度も観るってことは
 できなくなったけどさ、
 人気映画でも行列する必要が
 無くなったし、メリットの方が
 大きいんじゃないかな」

「そうそう、
 鑑賞料金が安くなってるのも
 大事なポイントかな」
「あららら?
 2019年に大手シネコンさんが
 鑑賞料金を1900円に値上げした
 というニュースがありましたが?」
「確かに一般料金は
 値上がりしてるんだけどさ
 今は割引がすごく多いんだよね
「私がよく使うTOHOシネマズだと
 毎週水曜日は1200円、
 20時以降の上映だと1400円でさ
 大抵はこのどっちかで観ちゃうから
 まともに一般料金を払うことって
 実は少ないんだよ」
「ははぁ……なるほど」
「さらに、シネマイレージカード
 入会すると、毎週火曜日も1200円
 になるし、6本映画を観ると、1本
 無料になるんだよ
 もし毎回1200円で観たとすると、
 6000円で7本映画が観られるわけ
 ま、カードの更新料はあるけど
 これはやっぱりお得だよね」

「最近はシネコンだけじゃなくて
 単館のミニシアターでも
 こういう割引が沢山あるからね。
 昔は12月1日の映画の日と
 1、3、6、9月の1日しか
 割引にならなかったんだから
 ホント良い時代になったと思うよ」

何だか宣伝のようになりましたが
あくまで賀島さんの個人的感想と
いうことでご理解下さいませ。

「あとね、これは個人的な話だけど
 私みたいな車必須の地方在住だと
 映画館に行くのはすごい楽なのよ
「楽?」
「晩ごはんを食べて後片付けして
 レイトショーで観たいのがあれば
 近くのショッピングモールまで
 車で20分くらいでひょいと
 行けちゃうんだよね。
 近所だし映画を観るだけだから
 ジャージにサンダル履きとかでさ
 レイトショーが終わると23時過ぎ
 だから帰り道はガラガラだし、
 駐車料金もサービスになるしね」
「なるほどなるほど」

「ところで、改めてお伺いしますが
 映画館で映画を観ることの
 魅力とは一体何でしょう?
「まあ確かに、配信で観た方が
 一番安くて楽なんだけどさ。
 例えば、
 『トップガン・マーヴェリック』
 みたいなアクション映画とか
 『ボヘミアン・ラプソディ』
 みたいな音楽重視の映画だと
 やっぱり大きなスクリーンと
 素晴らしい音響施設で観た方が
 より楽しめると思うんだよね」
「確かに」

「あと、これは個人の感想だけど
 何て言うか……
 暗い映画館で集中して観た方が
 作品をより深く味わえるような
 気がするんだわ
「映画館から出る時、
 映画に没入してた余韻が残ってて
 ちょっと現実感が無かったりする
 ことってあるじゃない?
 ああいう感覚が好きなんだよね」
「そういうものですか」
「ま、私は家飲みとかもしないし
 ずっと家に籠ってるのもアレだから
 ちょうど良い気分転換なんだよね
 シナリオの勉強にもなるしさ」

今年に入ってから賀島さんが
映画館でご覧になった映画は
本日までで59本になります。

「大体平均すると
 週に1本ちょいってとこだよね。
 コロナの前はもうちょい観てたと
 思うんだけど、今は車で行ける県内
 の映画館に絞ってるからさ」

「ちなみに……ご覧になった中で
 特に素晴らしかった映画を
 3本挙げるとしたら何でしょう?
「あー……難しい質問だな~~……
 とても絞り切れないよ
 10本でもいいかな?
「はいはい」

以下に列挙したタイトルは
順位付けされたものではなく、
本年の公開日順に並べたものです。












……10本と言いながら
 11本あるようですが?
「いやごめん!
 やっぱどうしても絞り切れなくて」

ちなみに、賀島さんは
鑑賞された映画の記録と感想を
こちらのTwitterで紹介しております。

今回はエロアニメの話題から
ちょっと離れたお話でした。
あまり頻繁に更新できず恐縮ですが
よろしければまた
私の話を聞きに来てくださいね。

#26 あなたがいない世界の

エロアニメの神様
11 /20 2022
さて今回は
先日のお話の続きです。

賀島さんは日本橋駅へ戻る道すがら、
ビデ倫、日本ビデオ倫理協会の思い出を
もう少し語って下さいました。

「……そう言えば
 ビデ倫の慰安旅行みたいなのも
 あったんだよ」
「慰安旅行?」
「一応名目上は
 研修ってことだったんだけどさ
 バスでホテルまで行って、
 研修会をちゃちゃっと済ませたら
 夜はコンパニオン付きの宴会で、
 翌日はゴルフか観光かどっちか
 選べるようになってたな。
 参加費も確か格安だったか……
 もしかしたらタダだったかも」

どうしてまた
 慰安旅行なんかがあるんです?
「ビデ倫の運営は基本的に
 メーカーが納めてる審査料とか
 認証シールの発行料で
 成り立ってるんだけどさ、
 あそこは営利団体じゃないから
 予算が余ってるとメーカー側に
 還元してくれるんだよ」
「研修って名目にすれば
 みんな会社の仕事って体で
 一泊二日のんびりできるってわけ」
「ははぁ……なるほど」
「さすがに何年かに一回だけの
 イベントだったけどさ、
 普段交流が無いAVメーカーさん
 と色んな話が出来たりして
 結構楽しかったなー……」

こうしてお話を伺っていると
賀島さんとビデ倫さんとの関係は
大変良好であったようです。

「……いや、良好と言えるかどうか
 分かんないけどね」
「あらららら?」
あの当時、とにかくスケジュールが
 ギリギリでねぇ……
 審査結果が出たら
 会社まで戻る時間が惜しくて、
 ビデ倫近くの路上から電話して
 ジャケット印刷とかDVDプレス
 の手配をしてたんだよ」
「そんなこんなで
 私はいっつも小汚いカッコして
 バタバタ右往左往してたからさ、
 何て言うか……しょーがねぇなぁ
 って思われてたんじゃないかな?」
「そうなんですか」

中でも一番追い詰められたのが
 忘れもしない
 『ボンデージ・ゲーム』第一巻の
 映像審査だね」

『ボンデージ・ゲーム』
2002年1月にアイルさんから
発売された18禁ゲームソフトです。
2003年4月にエロアニメの第一巻が
ピンクパイナップルさんから
発売されております。

「この作品はメーカーさんとしても
 力を入れていたタイトルでさ。
 キャラデザインと作画監督を
 雑誌『メガストア』の表紙絵で
 有名だったうめつゆきのりさんに
 お願いしたんだよね」
「ほうほう」
「これは昔も今も同じだけど、
 腕の良い絵描きさんはとにかく
 もうスケジュールがパンパンでさ
 作画作業が遅れちゃってたの」
「何とかアフレコとダビングは
 済ませたんだけど、それでもまだ
 全然絵が埋まらない」
ビデ倫の映像審査もギリギリで
 予約してたんだけど、その前日に
 なっても、モザイク入れどころか
 絵が上がってないカットが大量に
 あるような状態だったのよ
「そんな状況からどうやって審査に
 臨まれたんですか?」

編集スタジオを一晩中借りてさ
 制作会社から上がってきたカット
 を順次差し込みながら、モザイク
 入れの作業も同時にするのよ。
 この時使った編集スタジオさんは
 当時としては新しいシステムでね
 映像データをHDにアップして
 複数の端末から同時に編集作業を
 進められる優れモノだったのよ」
「えーと、それはつまり……」
「簡単に言うと、三台の端末を使って
 作品の始めと終わりと真ん中、
 同時に三か所からモザイク入れや
 カットの差し込みが進められる
 ……ってわけ」
「おおぉ……それは素晴らしい。
 それで何とか審査に間に合ったと
 いうことですね?」
「……いやそれがねぇ。
 やっぱり間に合わなかったのよ」
「えぇえぇっ!?……」

「その編集スタジオさんのシステムは
 素晴らしかったんだけどねぇ……
 オペレーターさんがアダルト作品の
 モザイク入れなんてやったことが
 ない人ばっかりでさ。
 結局、いつものスタジオでやるより
 時間が掛かっちゃったんだよね
「あらあら、まあまあ……」
「それに加えて、幾つかのカットの
 仕上がりが遅れたまま夜が明けて
 映像審査の時間にはどうやっても
 間に合わなくなっちゃった

「では、ビデ倫の映像審査を
 延期されたんですか?」
「それが許されるんだったら
 最初っからそうしてるよ
 当時はビデ倫も審査スケジュール
 が立て込んでたからねぇ。
 もし審査の予約をキャンセルして
 再申請なんかしてたら、納品日に
 絶対間に合わなくなっちゃう」
「となると……どうしたんです?」

これはズルいやり方で
 今だから言える話なんだけどさ。
 ビデ倫の映像審査に行く時、
 あえてモザイクが全く入ってない
 ビデオテープを持ってったの
「はい?」
「もちろんそれで映像審査が
 通るわけないんだけどさ。
 私のうっかりで間違ったテープを
 持ってきちゃったことにして、
 すぐに編集スタジオからバイク便
 でテープを届けてもらうから、
 何とか今日中に映像審査をお願い
 したいって交渉したの。
 例え数時間でも、どうにか時間を
 稼ごうと思ってさ」
「ははぁ……何と言うか
 そこまでなさるんですね……」

「必死に拝み倒して何とか審査を
 待ってもらってさ、後はもう、
 バイク便でテープが届くのを
 ビルの前でずっと待ってたよ。
 そんなにすぐ届くわけないって
 分かってたんだけど、状況的に
 食事に行ったり会社に戻ったり
 できる立場じゃなかったしさ」
「そしたら、審査員さんとか
 ビデ倫のエラい部長さんとかが
 心配してちょくちょく私の様子
 を見に来てくれてさ……
 もう申し訳なくて申し訳なくて
 いたたまれなかったねぇ……」

「その後、バイク便で届いたテープで
 審査を通過されたわけですね」
「3~4時間後にようやくテープが
 届いて、審査員さんの空き時間を
 待って、どうにかこうにか審査を
 してもらったんだけどね……結局
 その日の審査は落ちちゃったのよ
「えぇええっ!?……」
「……いやね、立ち合い審査だから
 私も審査員さんと一緒に
 そのビデオを観たんだけどね、
 結局、編集が間に合ってなくてさ
 あちこちモザイクが抜けてたり、
 リテイクカットが差し変わって
 ない状態だったんだ。
 あれじゃ審査に通るわけないよ」
「でも、その日に審査できなければ
 もう納品日に間に合わないという
 お話だったでしょう?」

実はさ……この日はとにかく
 映像審査を受けることが第一でね
 最悪、審査に落ちちゃっても
 何とかできる抜け道があるんだよ
「どういうことです?」
「もし、審査をキャンセルして
 予約を再申請するとなると、
 日数が空きすぎて納品日には
 絶対間に合わないんだけどさ。
 例えどんなボロボロの内容でも
 とにかく一度審査を受けて、
 その【修正審査】って形なら
 日数を開けずに受けられるのよ」
「修正審査?……」
「審査で不適切な箇所があった場合、
 審査員さんはそのタイムコードを
 キチンと記録しておくのよ。
 で、メーカー側が修正した映像を
 持ってきたら、その修正審査では
 前の審査で不適切だった箇所だけ
 早送りしてチェックするわけ」
「ふむふむ」
「だから修正審査ってのは
 あんまり時間が掛からなくてさ、
 通常の審査の合間にちゃちゃっと
 観てもらえるシステムだったのよ
 特にエロアニメはAVと違って
 そもそもの本編尺が短いわけだし、
 融通が利いたんだよね」

「ということはつまり……」
「我々としては、最悪でも
 修正審査にさえ持ち込めれば
 何とか納品日に間に合わせる算段
 があったんだよ」
「バイク便でテープを送った後、
 制作現場と編集スタジオは
 一旦休憩してたんだけどさ、
 私が審査結果を報告した時点から
 すぐに修正作業を始めて、
 翌日には修正審査を受けたんだ」
「ははぁ……なるほど……」
「で、修正審査は何とかクリアして
 どうにかこうにか納品日に
 間に合わせたんだよね」

「何と言うか……
 壮絶な綱渡りだったんですね」
ビデ倫の審査員さんたちも
 制作現場が滅茶苦茶だったことは
 薄々分かってたんだろうね
「ビデ倫に持っていくテープを
 間違えたって話はまだしも、
 その後、バイク便で届いたテープ
 がボロボロの状態だったことは
 説明がつかないもの」
「確かに」

「修正審査の時にも、審査員さんには
 お詫びしたんだけどさ、
 エラい部長さんだけは外出中で
 その時は会えなくて、
 改めて一週間後に菓子折り持って
 お詫びに行ったんだよ」
「そこで何か怒られたんですか?」
「こっちはビクビクしてたんだけどさ
 『毎日審査で忙しいんだから
  一週間前のことなんかいちいち
  覚えてらんないよ』って
 笑って流してくれたんだよね……」

ビデ倫の審査で
【一番追い詰められた思い出】
話していたはずなのに、
賀島さんの表情は、何だかとても
懐かしそうに見えました。

「メーカーの関連会社を辞める時、
 ビデ倫にも挨拶に行ったんだよ。
 いつも小汚いカッコしてた私が
 珍しくスーツなんか着てたから
 審査員さんたちが面白がってね。
 最後にデスクの上にあった缶から
 フルーツのど飴を貰ったんだ」
「ほうほう」
「帰り道、日本橋駅に戻る途中で
 そののど飴を舐めてたら、
 何だか無性に込み上げてきてね。
 いい年した大人が恥ずかしいけど
 日本橋の上で涙ぐんでたよ……」

そんな思い出を語っていると
賀島さんの目には
また涙が浮かんでいるようです。
しかし私はそれを
恥ずかしいとは思いませんでした。

「……神様、
 また一曲リクエストしていいかい?」
「はいはいどうぞ」
『ベルセルク 黄金時代篇』
 MEMORIAL EDITIONのエンディング
 中島美嘉さんの
 『Wish』を聞かせてよ」

『ベルセルク 黄金時代篇』
三浦建太郎さんのコミック
『ベルセルク』を原作とした
劇場アニメーションで
2012年から2013年にかけて
全三部作が公開されました。

2022年10月に
MEMORIAL EDITIONと題し
テレビシリーズとして再編集されて
放送・配信されています。
中島美嘉さんの『Wish』
MEMORIAL EDITIONのために
新規に書き下ろされた
エンディング曲です。


「メインキャラとキーアイテムが
 次々と塵になっていくだけの
 シンプルな映像なんだけどさ
 物語に寄り添った切ない曲で
 すごく余韻が残るんだよね
 今期のアニメで
 一番好きなエンディングだよ」

本日も長々とお聞きいただいて
ありがとうございました。
あまり頻繁に更新できず恐縮ですが
よろしければまた
私の話を聞きに来てくださいね。

#25 時に競い合って さり気なく励まし合ったり

エロアニメの神様
11 /11 2022
その日、
賀島さんは日本橋におられました。
単館上映の映画を観に行く道中、
日本橋駅で途中下車されたのです。

商業施設・コレド日本橋に隣接した
出口から地上に出ると、
そのまま迷うことなくスタスタ歩いて、
足を止めたのは
とあるビルの解体現場でした。

「ここに何かご用があるのですか?」
「……用は無いんだけどさ、ここはね
 昔、ビデ倫があったビルなんだよ」

ビデ倫、日本ビデオ倫理協会
かつて存在したアダルト映像メディア
の審査団体の一つだそうです。

「……ところで、改めて伺いますが、
 審査団体とはどのようなモノなの
 でしょうか?」
「んーとね、そもそもエロメディア
 のメーカーさんが自分達の作品は
 法律に違反していませんよって
 対外的に証明するために作った
 【自主審査組織】なんだよね」
「自主審査?」
「そうなのよ。よく警察やお役所の
 組織だと思ってる人いるんだけど
 全然違うんだよね。
 自分達で審査団体を作って、
 キチンと自主規制してますから、
 警察は取り締まらないで下さいね
 ってことなんだよ
「ははぁ……なるほど」
「こういう審査団体の認証が無いと、
 店舗でもネットの販売サイトでも
 レンタル店でも作品の取り扱いは
 できないからね」

「審査審査と仰いますが、
 具体的にどんなことをチェック
 されているんですか?
「一番大きいのは、モザイクの範囲と
 濃さの問題だね。
 あとは、禁止されている用語を
 使ってないかどうか、
 18歳以下のキャラの性行為や
 近親相姦・獣姦をしてないかとか
 その辺のチェックだね」
「エロとは直接関係ない表現でも
 指導されたりするんだよね。
 切断された生首をアップにしたら
 あんまりグロすぎるから
 断面にモザイクを入れてって
 指導されたことがあったな」

面白いのはアナルのモザイクだね。
 アナルは性器じゃないから
 ただ映すだけならモザイクを掛ける
 必要はないんだけと、
 肉棒を挿入したり、指で弄ったり
 大人のオモチャを挿れたりすると
 性行為ってことになって
 モザイク掛けなきゃいけないの」

賀島さんはエロアニメメーカーさん
の関連会社で働いた経歴があるので
この辺の事情には詳しいようです。

ビデ倫が今の審査団体と
 大きく違ってたのは、
 立ち合い審査だったことだよね
「立ち合い審査?」
「事前に作品のタイトルを申請して
 審査の予約を取ってさ、
 当日にビデオテープを持ち込んで
 二人の審査員二人と一緒にビデオ
 見ながら審査してもらうの」
「今はもう、映像素材を審査団体に
 送って、後日結果を知らせてくる
 形らしいよ」
「立ち合い審査の方が
 製作者としては手間が掛かる
 気がするのですが……」
「でも、
 その場で審査結果が出るからね。
 スケジュールがギリギリだと
 時間のロスが無くて助かったよ」

「それと、やっぱり審査員と直接
 対話できるっていうのが
 色んな意味で勉強になったよ
「勉強になった?」
「審査する方とされる方って言うと
 敵対してるみたいだけど
 そうじゃないんだ」

「映像本編の審査とは別に
 DVDやビデオのジャケットの
 審査もあったんだけどさ、
 あらすじを紹介した文章の中に
 【看護婦】っていうNGワードが
 入っちゃってたの
「看護婦?」
「これはエロとは関係ないんだけど
 当時法改正があって、
 女性の看護婦も男性の看護士も
 【看護師】って呼び方に
 統一されることになっててさ。
 要は私のチェックミスなんだよ」
「ふむふむ」
「けどね、
 その時の審査員に言われたんだ。
 看護師って表現は男女共通だし
 いやらしさが足りないだろ?
 だからさ【ナース】って
 言い換えればいいんだよ。
 これなら看護師より艶っぽいし
 文字数も同じだから、デザインの
 修正も楽じゃん?……ってね
「ははぁ……なるほど」
「お互いに共存共栄の関係だから
 なるべく協力してあげようって
 スタンスだったんだよね」

鬼ノ仁さんのコミックスで
 『制服少女』って作品をエロアニメ
 化したことがあったのよ。
 むらかみてるあき監督でね。
 ところがこのタイトルがビデ倫に
 引っかかっちゃったんだ。
 【制服】で【少女】だと
 どうしても18歳未満のキャラを
 想像しちゃうってことでさ」
「あらあらあら……」
「この時、ピンクパイナップルの
 織賀進プロデューサーが
 『制服処女』ってタイトル名を
 捻り出したんだよね」
「ほほう」
「少女と処女は音も似てるし、
 ニュアンスの変化も少ないし
 良いアレンジだよね?」
「で、原作元さんに了解を取って、
 ビデ倫に再申請したんだけどさ、
 その時の審査員さんに
 『上手いこと考えたなー』って
 笑って褒められたんだよねぇ……

良い思い出がいっぱいですね
「勿論、どやされたこともあったし
 辛かったこともあったよ?」

「ある時、
 同じ会社のあるプロデューサーに
 ビデ倫の立ち合い審査だけを
 頼まれたことがあったんだ」
「立ち合い審査だけ?」
「当時、私の通勤経路に日本橋駅が
 あったんだよ。
 だから自分の担当作品以外でも
 ビデ倫への用事をちょくちょく
 頼まれてたの」
「ほうほう」
「エロゲー原作でストーリー重視な
 作品の第一巻でね。
 エッチシーンはラストの5~6分
 しかない話だったんだ。
 だからそのプロデューサーも審査
 は楽に通ると思って、私を代理に
 行かせたんだと思う」
「審査が通らなかったんですか?」
「いや、通ったよ。
 全く問題ナシってね」

「……でもエロシーンのない20分を
 一緒に観てる時、審査員の一人に
 言われたのよ。
 『……これ、全然エロくないけど
  いいの?……本当に売れるの?』
 ……ってね」
「それはまた……」
その言葉がグサッときてさ、
 プロとして真剣にエロ作ってるの?
 って聞かれた気がしたんだ
 審査を通るかどうかじゃなくてさ、
 そういう作品を持ってきちゃった
 ことが恥ずかしくてねぇ……
「担当プロデューサーには審査が
 通った旨だけ報告したんだけどさ
 あの時のことは忘れらんないね」
やっぱビデ倫は、ただの審査団体
 じゃなくてさ、立場は違うけど、
 一緒に業界のことを考えてくれる
 【仲間】なんだなって思ったよ

賀島さんが製作のお仕事から離れて
シナリオライターになった後、
2007年8月、日本ビデオ倫理協会は
アダルトDVDの審査が不十分として
警視庁の家宅捜索を受けます。
2008年3月、審査部統括部長が猥褻
図画頒布幇助の容疑で逮捕。
2008年6月に協会そのものが活動を
休止してしまいます。

「この頃にはもう、知り合いだった
 職員さんや審査員さんたちは
 みんな居なくなっててさ。
 私もニュースを聞いただけだから
 詳しい経緯や事情、背後関係は
 よく知らないんだよね」

「……ただ実は、ビデ倫が無くなった
 後もこのビルにはちょくちょく
 来てたんだよね」
「はい?」
「エロアニメメーカーのバニラさんや
 ぱしゅみなさんを運営してる会社が
 このすぐ近所にあってね。
 打ち合わせで来ることがあると、
 その前後にちょっと寄ってたんだ。
 少なくとも2013年頃までは
 空きテナントになってたと思う」
「その空きテナントに来て、
 何をしていたんですか?」
何だかんだ言って、良い思い出が
 沢山あったからね。
 懐かしくて物思いに耽ってた
「勿論、テナントの室内に入ることは
 できないんだけどね。
 エレベーターで5階まで上がって
 ドアの前まで行って、フロアの
 トイレだけ使ったりしてさ」

その思い出のビルは、周りの幾つかの
ビルと合わせて解体されていました。
どうやら一帯が再開発されるようです。

「知り合いから噂で聞いてさ
 ちょっとまた、
 無性に懐かしくなってね……」

『特命戦隊ゴーバスターズ』
 エンディングで
 『キズナ~ゴーバスターズ!』って
 曲があるじゃない?」
「はい?」
「ビデ倫とはあんな感じの関係性
 だったと思うんだよね
 『ギリギリになっても
  バラバラにもならない』とか
 『時に競い合って
  さり気なく励まし合ったり』
 とかさ」
「なるほど」

『特命戦隊ゴーバスターズ』
2012年から放送された
東映制作の特撮テレビドラマです。
エンディングテーマは
幾つかバージョンがありますが
本日は2013年に公開された
劇場版の主題歌でもある
『キズナ~ゴーバスターズ!
 豪快にアレンジver.』
をご紹介しましょう。


賀島さんとビデ倫の思い出話は
もうちょっとだけ続きます。

佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
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