2ntブログ

#24 あなたがこの世に生まれたのは

エロアニメの神様
10 /31 2022
さてさて、

本日は前回のお話の続きです。


若かりし頃、脚本家事務所に所属して

TVアニメやドラマCDなどなど

いわゆる一般向け作品のシナリオを

執筆されていた賀島さん。

ところがお仕事に行き詰りを感じて

事務所を退所されてしまいます。

ライターとして一度筆を折った彼は

どのようにしてエロアニメライター

として復帰したのでしょうか?


「脚本家事務所を辞める時、

 師匠や先輩が骨を折ってくれてさ

 とある映像メーカーの関連会社に

 就職が決まったのよ。

 で、そこがエロアニメメーカーの

 ピンクパイナップルさんと繋がり

 がある会社でね。

 プロデューサーの織賀進さんとの

 付き合いがそこから始まったのよ」

「ほうほう」

「面接の時に

 『愛姉妹2~二人の果実~』

 『臭作~Liberty~』

 サンプルDVDを貰ってねぇ

 それだけでウキウキだったのを

 今でも覚えてるよ」


「当時からエロアニメは

 お好きだったんですか?」

「うん、もちろん。

 ネットが普及してなかった当時、

 エロアニメとかAVが一番安くて

 身近なエロメディアだったからさ

「一番安い?」

「ソフトを購入するんじゃなくて

 レンタルビデオを借りてたのよ。

 そうすると実はエロ本を買うより

 安く楽しめたりするんだよね」

「ははぁ、なるほど」

「当時、自転車であっちこっちの

 レンタル店を回って、好みのAVや

 エロアニメを探してたなぁ……」


「以前、賀島さんが初めてエロアニメ

 のアフレコを見学したのは

 『臭作~Liberty~』の後編だった

 と伺ったことがありました」

「そうそう、入社二日目だったかな。

 この作品は何が凄いって、高部絵里

 のHシーンがあるんだよね~」

「何がどう凄いのですか?」

「絵里は原作ゲームでは最後まで

 犯されなかったキャラクターなのよ。

 それがエロアニメで初めてHシーン

 を出しちゃったからねぇ。

 『臭作』のアニメ化は

 3シリーズ目だったんだけど

 個人的にずっと見続けていたから

 本当にビックリしたわ。

 それと同時に、

 この内容を原作元にOKさせた

 織賀進プロデューサーの手腕にも

 驚かされたね」


メーカーのプロデューサーさんとは

 どんなお仕事をされるのですか?

「まずは社内会議で制作する作品の

 候補が決まってさ、それに対して

 原作元さんと原作使用契約、

 制作現場との制作委託契約を締結

 するのが始めの仕事かな」

「その後は、シナリオやキャラデザや

 コンテが上がってきたらチェック

 して、原作元さんにも確認を取る」

「現場が本格的に動きだしたら、

 ジャケット版権や見せ場になるカット

 を先行して仕上げてもらって、

 ポスターや宣伝素材を作成するの。

 で、HPや店舗用の紙資料や雑誌広告

 なんかで告知を進めるわけ」

「カッティングからアフレコ、ダビング

 V編には全部立ち会って、その後は

 モザイク入れと審査団体への申請」

「審査が通ったらジャケットの印刷や

 盤面プレス作業の手配、最後に検証盤

 のチェック……くらいかな?

 まあ大雑把な流れだけど」

「メーカーさんとしては、毎月何らかの

 新作を出す必要があるから、

 常に5~6作のタイトルを抱えて

 同時進行させてる感じだったね」


「こんな風に製作のお手伝いをしてる頃

 荒木英樹監督やむらかみてるあき監督

 とも知り合いになったんだよね」

「なるほど、こうしたお仕事の中で

 エロアニメシナリオへの関心を

 高めていったわけですね?」

「……いや、実はそうでもないんだ」

「あらららら?」

「シナリオライターの仕事はもう完全に

 諦めたつもりだったし、当時は正社員

 待遇で福利厚生もしっかりしてたし、

 このままプロデューサーの仕事を

 続けて、将来的には織賀進さんの後を

 継ごうと思ってたんだよ

「それがまたどうして?」


「……これは流石に内部情報が絡むんで

 詳しくは言えないんだけどさ。

 とある会社の事情で

 ピンクパイナップルさんの製作本数が

 著しく減った時期があったんだよ。

 これはエロアニメだけじゃなくて、

 一般アニメも実写映画もVシネも

 出版もグッズも全てのセクションが

 同じ状況だったんだけどね」

「それはそれは……」

「社員も大半が退職しちゃう状況でさ、

 入社二年そこそこの新人だった私も

 もう会社に居られなくなっちゃった

 んだよねぇ……」

「実はこの出来事、

 エロアニメ業界全体にとっても一つの

 分岐点になってててさ。

 当時、ピンクパイナップルさんから

 制作を受注してた【ひまじん】さんが

 ピンパイさんからのお仕事が極端に

 減っちゃったんで、自社レーベルを

 立ち上げることになったんだよ」

「ほうほう」

「当初はレーベル名も

 【ひまじん】で立ち上げたんだけど、

 これが今日の【エイ・ワン・シー】

 さんに繋がっていくわけだからね」


「そして賀島さんは

 いよいよエロアニメライターを

 志すわけですね?」

「……いやごめん、そうでも無かった」

「おやおやおや?……」

「メーカーの関連会社を辞めたあと、

 お付き合いがあった制作会社に

 勤めたりもしたんだけどさ、ちょうど

 その頃、付き合ってたカミさんとの

 結婚を考えてて、思い切って独立して

 個人事務所を興したのよ

「それが現在も

 こうして続いているわけですね?」

「本当は法人化しないで、

 個人で確定申告してた方が良かったと

 今では思ってるんだけどさ。

 まあ若かったよね。

 【自分の会社】って響きについつい

 魅力を感じちゃってさ」


「その時またシナリオの仕事をしようと

 は思わなかったんですか?」

「思ってなかったね。

 自分の会社って言っても、今と同じ

 在宅の個人事業だし、自分の家族の

 食い扶持だけ稼げばいいんだから、

 まぁ気楽なもんだったのよ」

「前のメーカーの関連会社に居た時に

 業界関係の知り合いは随分増えたから

 ちょっと制作のお手伝いをしたり、

 DVDのブックレットを書いたり、

 細かい仕事をチマチマしていたの」


「……で、そんな仕事をしてたある日、

 ピンクパイナップルさんに残っていた

 織賀進さんから、エロアニメシナリオ

 の依頼が来たのよ

「おおぉ……遂に来ました!」

「この時依頼されたのは、『鬼作魂』

 第三巻なんだけどさ」

「一巻ではなく、三巻なんですか?」

「元々この作品は、エルフさん原作の

 『鬼作』のアニメ化第二弾でね。

 私がまだ製作の仕事をしていた頃に

 一巻と二巻は発売してたのよ。

 で、その売上が好調だったから、

 第三巻が追加で制作されることに

 なったわけ」

「なるほど」

「ただ、二巻までのスタッフはもう

 別の作品の制作に入ってたんで、

 スタッフを変更することになって

 私に依頼が来たのよ」

「という事は、この作品が賀島さんの

 エロアニメシナリオデビューになる

 という事ですね?」

「……いやそれがね、

 実はこの話、断っちゃったのよ

「えぇええっ!?……」

「自分に実力が無かったからライターを

 辞めたって意識があったし、

 何と言ってもライターを辞めてから

 2年以上経ってたからね。

 相当腕が鈍ってるんじゃないかって

 思ってたの」

「そういうものなんですか?」

「ライターでも絵描きでも役者でも……

 いやまあアニメに限った話じゃなくて

 技術的な職業っていうのは、

 やっぱり休めば休んだだけ

 感覚が鈍ってくるんじゃないかな。

 車とか自転車の運転と同じだと思う」


実際の私のデビュー作は、それから

 約1年後、アトリエかぐやさん原作の

 『姉汁THE ANIMATION』の第一巻だよ

 これも製作はピンクパイナップルさん

 制作はティーレックスさんだったね」

「ピンクパイナップルさんが

 製作ということは……」

「そう、また織賀進プロデューサーが

 声を掛けてくれたんだよ」

「今度はどうして引き受けたんですか?」

「織賀さんはエロアニメのイロハを

 教えて頂いた恩人だからね。

 続けて断るのは気が引けたし……

 織賀さんに言われたんだよ。

 『もし内容がダメだったら、

  俺が直してやるから』ってさ」

「なるほど、それなら安心ですね」

「いやそれがね、

 そう単純な話でもないんだ」

「え?」


「織賀さんは美大出身で

 制作会社の進行で叩き上げた人でね

 絵は多少描けるんだけど

 文章が書ける人じゃないのよ。

 だから一緒に仕事してた頃は

 私がその辺をお手伝いしてたの」

「ではどうして『自分が直してやる』

 なんて仰ったんですか?」

お互いにそんなの無理って分かってる

 見え見えのハッタリなんだけどさ、

 何とか私のことを励まそうって

 気持ちだけは伝わってきて、

 不思議と胸を打たれたんだよね。

 それで、何とかもう一度だけでも

 頑張ってみようって思ったんだ」


「実際の作業はどうだったんですか?」

「OVA全2巻の企画だったからさ

 原作ゲームをじっくり解析してから

 プロットは2本まとめて作ったんだよ。

 で、それは問題なく一発OKで

 #1のシナリオは二稿でOK。

 #2のシナリオを書いた後で、

 原作元さんからリクエストがあって

 プロットを改訂したんだけど、

 それでも結局4稿でOKだったかな」

「久しぶりのシナリオで、

 初めてのエロアニメシナリオで、

 さぞ苦労するだろうと思って

 スケジュールも余裕持ってたんだけど

 思いのほかあっさりと決定稿に

 なっちゃった……って感じだった。

 もちろん、織賀さんに直しをお願い

 することもなかったよ」


「やはり賀島さんには

 エロアニメシナリオの才能があったと

 いうことなのでしょうか?」

……よしてよ、それこそアニメや漫画

 じゃあるまいし

「では、どういうことなのですか?」

「メーカーの関連会社にいた2年間、

 何だかんだ言って、毎日エロアニメの

 ことばっかり考えてたんだよ。

 シナリオもコンテもじっくり読んだし、

 監督や役者さん、クリエイターさん達

 たちとも色んなことを話し合った。

 売れそうな原作をチェックしたり、

 見栄えのする版権の構図を考えたり、

 告知宣伝のプランやジャケット裏面の

 テキストを練ったりさ。

 そういう作業の積み重ねで、

 エロアニメ制作に関するスキルが

 いつの間にか上がってたんだろうね

「なるほど」


「後はね、エロアニメは目的がハッキリ

 してるから取り組みやすいってのも

 あると思うんだ

「どういうことでしょう?」

「TVアニメだとさ、

 色んな魅力の出し方があるじゃない?

 女の子の可愛さで魅せてもいいし、

 アクションやメカ戦のカッコ良さで

 魅せるのもいい、ギャグで笑わせるの

 もいい、音楽で魅せるのもいいし、

 泣かせる作品を目指してもいい。

 魅力的な作品を作るために、

 色んなやり方があると思うんだよ」

「それはそれで良いことだと思うけど

 反面、あまりに選択肢が多すぎて

 迷っちゃう部分もあると思うんだ

「なるほど」

「それに対してエロアニメは

 とにかくまずエロくあること、

 パンツを脱いで待ってるお客さんを

 スッキリさせるっていう目的が実に

 ハッキリしてると思うんだよ

「だから、何かで迷った時に

 どうしたらよりエロくなるのか?

 ってことを第一に考えればいいから

 考えやすいんだよね」

「そういう考え方もありますか」


「最後にこれは個人的なことになるけど

 TVアニメや一般作では、どうしても

 空気を読んじゃって、無難な作品、

 ありきたりな置きに行く作品しか

 書けなかった私なんだけどさ。

 どうしたらよりエロくなるのか?

 ってことを第一に考えると、

 それは男性の本能的な部分だからね

 本性と言うか、本音の部分が

 自然に出せたっていうのが

 良かったんじゃないかなと思うよ


「……いやはや、今回は本当に

 長々とありがとうございました。

 ではでは最後に

 私から一曲ご紹介したいと思います。

 1981年公開、手塚治虫さん原作の映画

 『ユニコ』のエンディングテーマで

 『愛こそすべて』です」



ご本人は気づかれていないようですが、

賀島さんがシナリオライターとして

エロアニメの現場に復帰できた理由は、

ユーザーとして、またスタッフとして

関わり続け、育まれてきた

エロアニメへの愛情があったからでは

ないでしょうか?


私はエロアニメの神様として、

技術よりも何よりも、

エロアニメを愛してくれる人が

スタッフにいてくれることを

何よりも嬉しく思います。


#23 夕陽に消えたあのヒーローが

エロアニメの神様
10 /18 2022
賀島さんは
エロアニメシナリオを書かれる以前、
TVシリーズのアニメシナリオ
書かれていた時期もあったそうです。
一体どうしてそちらのお仕事を
辞めてしまわれたのでしょうか?

「……いや別に辞めたくて
 辞めたんじゃないけどね。
 単純にシナリオの仕事が無くて
 生活が苦しかったからさ」
「……ごめんなさい、
 嫌なことを聞いてしまいましたか?」
「いやいや、別にいいよ。
 もしあのままでいたら、エロアニメ
 に関わることも無かっただろうし、
 結果として、今の仕事と今の生活
 には満足してるんだからさ」

「やはり賀島さんは
 エロアニメの方が性に合っていた
 ということでしょうか?」
「それもあると思うけど……
 やっぱりあの頃は
 ビビってたんだと思うね
「ビビってた?」

「TVのシナリオ打ち合わせには
 シリーズ構成と他のライター、
 監督や演出にプロデューサー、
 番組によっては原作元やTV局の
 プロデュサーも参加しててさ、
 10人以上のスタッフに自分の
 シナリオを検討されるわけよ」
だから新人の頃はさ、
 とにかく変なこと書いちゃダメだ
 直しを少なくしなきゃダメだ
 早く決定稿にしなきゃダメだって
 ガチガチだったんだよね

「そうなるともう、書く内容が全部
 【無難なモノ】になっちゃってさ」
「無難なモノ?」
「例えばアクションもので
 強敵に何か攻撃を仕掛けた時、
 朦々と土煙が上がって、
 『やったか?』とか言うんだけど
 強敵はノーダメージ……みたいな
 描写ってよくあるじゃない?
 そんな感じで、
 『まあ普通そんな感じだよね』
 って誰もが思うような描写、
 ありきたりな描写とも言えるかな
「なるほど」
野球のピッチャーに例えると
 四球や死球が怖くて、ストライクを
 【置きに行ってる】感じだね。
 でもそんなボールがバッターに
 通じるわけもなくて、
 そんな調子で書いたシナリオは
 打ち合わせではボコボコだよね

「昔よくライターの先輩に
 『このシナリオ何が書きたいの?』
 って言われてさ、
 当時は未熟だから怒られてると
 思ったんだけど……違うんだよね」
「どう違っていたんですか?」
ただひたすら無難にまとめただけの
 シナリオだと、そのライターの
 意図が分からないんだよ。
 アクションなら何をカッコいいと
 思っているのか、ギャグなら何が
 面白いと思っているのか、恋愛物
 ならどこでキュンキュンするのか
 突き詰めて言うと、
 このシナリオで何が言いたいのか
 ……ってことになるのかな」

シナリオの【テーマ】
 ということでしょうか?」
「まあそう言っちゃうと大袈裟に
 聞こえるけどね」
「例えば、戦隊もので新しいロボが
 出てくる話とか、プリキュアで
 新しいアイテムが出る話とかは、
 そのロボやアイテムが
 カッコよく見えて盛り上がる話を
 考えなくちゃいけない訳でしょ?」
エロアニメで考えてみても、
 ある女の子にエッチをさせる時、
 そのキャラの魅力は胸かそれとも
 お尻か、あるいはをMっぽい性格
 なのか、人妻という設定なのか、
 アピールしたい強調したいものが
 何なのかによって、
 どんなエッチシーンにするのか
 場所や相手やシチュエーション、
 アイテムや体位も違ってくるのよ
「ははぁ……」

例えシナリオの技術が未熟でも、
 そのお話で、あるいはそのシーンで
 一体何を見せたいのか?
 っていうライターの意図が分かれば
 先輩ライターや監督、スタッフは
 経験豊富なんだから、いくらでも
 アドバイスしてあげることが
 できるんだよね
「ところがそれがよく分からなくて
 ただ無難にまとめてあるだけだと
 『このシナリオ何が書きたいの?』
 ってことになっちゃうわけ」

「そのことに当時は
 気づかれなかったんですか?」
もうテンパってて、一杯一杯で
 とてもそんな余裕はなかったなー
「そんな調子だったから、
 当時はプロットで二~三稿、
 シナリオで四~五稿になるのは
 当たり前でさ。
 何とか決定稿になっても
 正直ホッとしたっていう感じで
 全然楽しくなかったんだよね」

「当時、自分の師匠の脚本家事務所に
 所属しててさ、今考えると、
 チャンスは一杯貰ってたんだよね。
 師匠がシリーズ構成を務めた作品
 の文芸担当にしてもらったことも
 あったりしてさ」

アニメ制作における文芸とは
制作会社や作品により様々な解釈が
あるようです。
賀島さんが担当されていたのは、
シリーズ構成の下に就いて、
スケジュール管理をしたり、
執筆に必要な資料を作ったりする
お仕事だったそうです。

「文芸担当なら、毎回脚本打ち合わせ
 に出席してるんだからさ、
 自分なりにプロットを書いて、
 見てもらえば良かったんだよ。
 シリーズ構成をやってるのは
 自分の師匠なんだしさ。
 上手く行けばシナリオを書くこと
 もできたかもしれない」
「何故そうしなかったんですか?」
やっぱりビビってたんだよね。
 未熟なプロットを提出して
 怒られるのが怖かったから。
 文芸担当に集中してるフリをして
 自分で仕事を取りに行かなかった

「事務所の中でもそうだったな。
 他の先輩の仕事に絡むチャンスは
 いくらでもあったはずなのに、
 事務所の経理とか掃除とか、
 雑用ばっか一生懸命だったような
 気がする」
「雑用に一生懸命なのは
 良くないことですか?」
「遊んでるよりは良いと思うけどさ。
 結局はシナリオの仕事から逃げて
 簡単な雑用で自分の存在意義を
 見つけようとしてるだけだからね
「師匠としても、事務所としても、
 雑用を一生懸命やることより、
 ライターとして大成してくれた方が
 よっぽど嬉しかったと思うし、
 利益にもなったはずなんだよ」
「確かに」
「落語でも前座のお仕事があるけど、
 それだけに一生懸命だったら
 本末転倒じゃない?
 やっぱり間近で師匠方の芸を見て、
 一日も早く二つ目、真打ちに昇進
 することを目指さなくちゃね」

「そんな中途半端な状態は
 自分でもやっぱり苦しくて、
 楽しくなくてさ。
 結局、所属してた脚本家事務所を
 自分から辞めちゃったんだよね

さて、そんな賀島さんが
どのような経緯でエロアニメの
シナリオライターになったのか?
その辺のお話は長くなってしまうので
また次回に続きます。

「んじゃ、
 とりあえず中締めってことで
 リクエスト曲いいかな?」
「はいはい、なんでしょう」
『新巨人の星』のエンディングで
 『よみがえれ飛雄馬』を聞かせてよ」

『新巨人の星』
『巨人の星』の続編として1977年に
制作されたTVアニメーションです。
原作は
梶原一騎さんと川崎のぼるさん。
アニメ制作は東京ムービーさんでした。

「この作品はねぇ、導入からの展開が
 メチャクチャ熱いんだよね~」
星飛雄馬は前作で左腕を壊して
 巨人軍を退団してるんだけど、
 長嶋巨人が低迷しているのを見て、
 代打専門でいいから巨人軍の役に
 立ちたいって、再起を決意すんの」
「んで、特訓を続けるうちに、
 実は飛雄馬は右利きだったことが
 明らかになんのよ。
 お父さんの星一徹が投手は左利き
 が有利だって、幼少期に無理やり
 利き手を変えさせたらしいんだ」
「作品中盤になって漸く飛雄馬は
 右投手として巨人軍に復帰するの。
 長嶋の背番号3を引き継いでね」

「エンディングは作詞が原作の
 梶原一騎さんなんだけどさ。
 作品の展開を踏まえた良い曲だと
 思うんだよね」


本日も長々とお聞きいただいて
ありがとうございました。
あまり頻繁に更新できず恐縮ですが
よろしければまた
私の話を聞きに来てくださいね。

#22 エロアニメに向いた素材を考える

エロアニメの神様
10 /10 2022
先日、電話での打ち合わせで
賀島さんがこんなことを仰いました。
『でもそれは
 エロアニメ向きじゃないよね』

エロアニメに向く内容、
あるいは向かない内容とは
どんなものなのでしょう?

「あー、はいはい、あの時はね、
 とあるエロゲーのどのシーンを
 エロアニメにするかって
 打ち合わせだったんだけどさ、
 あるシーンがローションとオイル
 でヌルヌルって内容だったんで、
 そのシーンはやめとこうって
 話をしてたのよ」
ローションとオイルは
 エロアニメに向かないのですか?

「絵で描いて動かすのが大変な割に
 あんまり効果的じゃないんだよね。
 エロゲーとかエロマンガだと
 止め絵でキッチリ描き込んで
 魅せることもできるんだけどさ。
 実写でやった方がよっぽど簡単で
 エロく見えるんだよねぇ……」
「ははぁ……なるほど」
「もしどうしてもそういうシーンを
 やるんなら、台詞で『ヌルヌル』
 とか『ベトベト』を強調したり、
 効果音を強めにしたりする工夫が
 必要かな」

エロアニメならではの向き不向き
 は他にもあるのでしょうか?
「そうねぇ……
 やっぱりファンタジーなんかは
 エロアニメに向いてるのかな
「女の子が触手やモンスターに
 犯されてしまうお話ですね?」
「エロアニメの黎明期には
 ファンタジー物の割合が多かった
 気がするね。
 やっぱ当時は、AVできるものを
 エロアニメでやっても意味が無い
 っていう風潮があったのかも」
「最近だと、女の子がモンスター化
 して責めてくる【モンスター娘】
 なんてのも出てきてるよね」

「ただ……やっぱファンタジー物も
 現代劇と比べると、作画のコスト
 が高くなっちゃうんだわ
「あらららら……」
「RPGに出てくるキャラみたいな
 戦闘服とか甲冑とかはどうしても
 線が多くて動かしづらいし、
 触手だってなかなか動かすのは
 面倒なんだよね~」
「昔は触手っていうと、
 女の子の身体に巻き付いて、
 犯しながら全身を愛撫するって
 いう印象があったんだけど、
 今はもう、挿入される触手以外は
 単なる拘束具って感じで
 あんまり動かせないみたい」

「あと、ファンタジー物で
 ケモ耳少女は気をつけなきゃ
 いけないんだよね」
「ケモ耳がですか?」
「AVだと単なるコスプレってこと
 で問題ないんだけど、
 ファンタジー世界のアニメだと
 本物の半獣人なわけでしょ?
 そうなるとこれが【獣姦】
 あたるってことで、審査団体から
 NGが出るケースがあるのよ」
「あらららら……」
「もちろん、責める側も同じことで
 狼男が女の子を責める場合、
 あんまり狼っぽいデザインだと
 やっぱり獣姦って思われちゃう」
「まあ、半獣人とモンスターの境目
 って微妙だったりするから、
 その辺はキャラデザイン次第って
 ところだけどねぇ……」

なかなか興味深いお話です。

「エロだけに限った話じゃないけど
 極端にディフォルメされた表現も
 アニメの得意分野だよね
「ものすごい巨乳とか、巨根とか、
 信じられない量の精液とか
 噴水みたいに噴きだす母乳や
 イッた時の女の子の潮とかさ」
「妊娠中の女の子とのエッチ、
 いわゆる【腹ボテ】なんかも
 アニメだと自由自在だよね」
「なるほど確かに」

「他にはそうだな……
 ロリものもエロアニメの方が
 合ってる気がするな
「ロリータ物ですか?」
「エロアニメでもAVでも
 18歳未満のキャラを出せないのは
 同じなんだけどさ、
 年齢は18歳以上だけど、
 幼く見えるキャラを出す場合、
 アニメの方が融通が利くんだよね。
 デザイン次第で自由自在だから」
「なるほど」
「魔物とかエルフとかメカ少女とか
 人形とか、人間じゃないキャラ
 にしちゃう手もあるしね」

「あとこれは私見だけど、
 老人が女の子を責めるシーンも
 アニメの方がしっくりくるかな
「どういうことでしょう?」
「例えば、訪問介護されてる老人が
 介護士の女性にムラムラしちゃう
 ……みたいなシーンの場合、
 AVで年配の男優さんが出ると、
 何て言うか、頑張れば頑張るほど
 痛々しく見えちゃうんだよね」
「ははぁ……」
「その点、エロアニメだと老人でも
 何でもお構いなしだからね。
 むしろ、クセのある責め手として
 老人キャラを際立たせることも
 できるからさ」

「向き不向きの話とはちょっと
 ズレちゃうけどもう一つ。
 シナリオライターとしては、
 エロアニメの方がお芝居ができる
 キャストさんが居てくれるから
 すごく助かってるよね~」
「その辺、AVとは違いますか?」
「AV女優さんは、
 エッチをエロく見せるプロだと
 思うんだよね。
 エロアニメの声優さんの場合、
 お芝居のプロがエッチシーンを
 演じてるわけだからさ。
 特にエッチシーン以外の
 日常芝居とかアクションとか
 モノローグとか、そういう部分は
 やっぱり違いがあると思うんだ」

賀島さんは
二次元エロメディアだけでなく
AVや三次元エロメディアも
ご覧になっているかと思いますが、
AVに向く内容というと
どんなものがありますでしょうか?

「そうねぇ……
 やっぱり一つのエッチシーンに
 じっくり時間を掛けられるのが
 AVの羨ましいところかな。
 痴漢ものとかで、
 最初は嫌がっているんだけど、
 30分以上じっくり愛撫されて
 段々メロメロになっちゃう……
 みたいなエッチシーンは、
 時間を掛けた分、説得力があると
 思うんだ」
「なるほど」

「あと、【時間停止もの】なんかは
 実に面白いと思うね」
「どんな内容なんですか?」
「ちょっとファンタジー要素がある
 ジャンルなんだけど、
 責め手の男が、女の子の時間を
 止めることができるわけ。
 で、マネキンみたいになった
 女の子の身体を好き放題しちゃう
 ……って内容なんだけどさ
 これの面白いところは、
 時間を止めることじゃないのよ
「むむむむ?……
 どういうことでしょう?」
「実際に時間を止めることなんて
 人間はもちろん、神様だって
 できないじゃない?
 だから女優さんとしては、あくま
 で時間が止まっているつもりで、
 何をされても黙って耐えなくちゃ
 いけないわけ。
 そういう姿を見て楽しむっていう
 趣向なんだよ
「ははぁ……なるほど」
「これはフィクションを
 上手く利用した企画の勝利だよね。
 実に面白いと思ったよ」

さてさて、連休中ということで
取り留めなくお話を伺ってきましたが
最後にまた何かリクエスト曲を
伺いましょうか?

「んじゃ今日は、
 『恐竜大戦争アイゼンボーグ』
 オープニング曲で
 『戦え! アイゼンボーグ』
 聞かせてよ」

『恐竜大戦争アイゼンボーグ』
円谷プロダクションさんが
1977年に制作した作品です。
キャラクターはアニメで
恐竜との戦闘シーンは特撮で
描かれているのが大きな特徴です。


「この作品はさ、
 『円谷恐竜三部作』って呼ばれる
 シリーズの第二作なんだけどね。
 次回作の
 『恐竜戦隊コセイドン』
 全編特撮で制作されてるんだよね」
「アニメと特撮の融合は
 失敗だったというわけですか?」
「その辺はよく分からないけどさ、
 まだ幼稚園児だった当時、
 個人的にはすごくインパクトがある
 作品だったんだよね。
 成功とか失敗とか
 そういうんじゃなくて、
 何か新しいものを求めていくって
 いう姿勢は見習いたいと思うな

ちなみにこちらの作品は、
中東で大変な人気があったそうで
放送から40年後の2017年に
新規撮影された短編ドラマが
ドキュメンタリー番組
『帰ってきたアイゼンボーグ』
一部として放送されたそうです。

本日も長々とお聞きいただいて
ありがとうございました。
あまり頻繁に更新できず恐縮ですが
よろしければまた
私の話を聞きに来てくださいね。

#21 僕は僕じゃなきゃ居られない

エロアニメの神様
10 /03 2022
賀島さんが九月末の納品を

乗り越えたということで

久しぶりの更新となります。


「……いやはやしかし、

 アラフィフともなると

 体力の低下を感じるよね~」


賀島さんのような在宅ワークで

体力の低下が具体的にどのような

影響を及ぼすのでしょうか?


「若い頃に比べて、

 集中力が持続できる時間が

 短くなったね。

 徹夜とか睡眠時間を削るのも

 もうダメかな。

 途中で集中力が切れちゃうから

 意味が無いのよ」

「ははぁ……なるほど」

「だから昔より規則正しく

 仕事をするようになったね。

 スケジュールをキチンと決めて

 その分量をキッチリ仕上げていく

 ……みたいな」


「あと、これは年齢には関係ないけど

 腰痛は我々の職業病かな。

 良い椅子とかクッションとかベッド

 ってよく話題になったりするよ」

「ちなみに賀島さんは

 何かされているんですか?」

「私は仕事用の椅子は

 ゲーミングチェアにしてるよ。

 まあ長くて3年位しかもたないから

 消耗品と思うようにしてるけどね。

 ベッドは普通のベッドだけど

 トゥルースリーパーって

 マットレスを入れてるよ」


「……とまあ色々やったところで

 クリエイターとしての衰え

 避けられないんだろうけどね」

「どういう意味でしょう?」


「スポーツ選手ほど顕著じゃないけど

 やっぱりクリエイターにも

 選手寿命みたいのはあると思うんだ

 あくまで私見だけど

 30~40代がピークじゃないかな?

「そうなんですか?」


「クリエイターの能力の変化って

 観覧車みたいなもんだと思うんだ。

 ずっと昇っていくんじゃなくて、

 中盤にピークがあって

 後はゆっくり下っていく感じかな。

 本当の意味での頂点の期間って

 意外と短い気がするよ」

「ははぁ……」

「いっぱい努力して

 大きい観覧車に乗ると、

 より高い場所には行けるんだけど

 やっぱり頂点から下っていくこと

 は避けられないと思うんだ」

「そういうものなんでしょうか?」


「私はね、尊敬しているアニメ監督が

 三人いるんだ。

 宮崎駿監督と富野由悠季監督、

 そして出崎統監督。

 この監督さんたちの30~40代の

 作品歴を紹介したいんだ。

 神様リストアップしてみてよ」

「はいはい」


宮崎駿監督(1941年生まれ)

『未来少年コナン』(78年:37歳)

『ルパン三世 カリオストロの城』

(79年:38歳)

『風の谷のナウシカ』(84年:43歳)

『名探偵ホームズ』(84年:43歳)

『天空の城ラピュタ』(86年:45歳)

『となりのトトロ』(88年:47歳)

『魔女の宅急便』(89年:48歳)


富野由悠季監督(1941年生まれ)

『無敵超人ザンボット3』

(77年:36歳)

『無敵鋼人ダイターン3』

(78年:37歳)

『機動戦士ガンダム』(79年:38歳)

『伝説巨神イデオン』(80年:39歳)

『戦闘メカザブングル』

(82年:41歳)

『聖戦士ダンバイン』(83年:42歳)

『重戦機エルガイム』(84年:43歳)

『機動戦士Zガンダム』

(85年:44歳)

『機動戦士ガンダムZZ』

(86年:45歳)

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

(88年:47歳)


出崎統監督(1943年生まれ)

『エースをねらえ!』(73年:30歳)

『ガンバの冒険』(75年:32歳)

『家なき子』(77年:34歳)

『宝島』(78年:35歳)

『ベルサイユのばら』(79年:36歳)

『あしたのジョー2』(80年:37歳)

『スペースコブラ』(82年:39歳)

『ゴルゴ13』(83年:40歳)

『おにいさまへ…』(91年:48歳)


全作品ではありませんが

ざっとまとめてみました。

ご年齢は誕生日と放映日・公開日を

考えると若干ズレがあると思います。

あくまで目安とお考え下さい。


「色々好き好きはあると思うけど

 やっぱり私はこの三人の監督の

 30~40代の作品が一番好きだし、

 影響も強く受けたんだよね。

 こうして改めて見てみると、

 やっぱり誰でも

 クリエイターとしてのピークって

 いうのはあると思うよ」


「賀島さんは現在アラフィフですが

 ご自身のクリエイター能力の低下

 を自覚されたことはありますか?

「いや今んとこ体力の低下以外に

 自覚症状は無いんだけどさ。

 こういうのは自分では気づかない

 もんだからねぇ……そのうち、

 数字に表れるようになって

 初めて気がつくんじゃないかな」

「数字?

 ソフトの売上のことですか?」

「いやそうじゃなくて

 自分に発注される仕事の本数だよ。

 それが少なくなってきたら

 ああ、衰えてきたのかなーって

 思うんじゃないかな


「もしお仕事が減ってきたら

 どうされるおつもりですか?」

仕事の発注がある限りは

 エロアニメを書き続けるよ。

 やっぱり好きだし楽しいしね

収入が足りないようなら

 今も少しやってる同人制作の本数

 を増やしていくと思う。

 エロアニメのシナリオじゃなくとも

 何らかのエロい文章を書いてないと

 腕が鈍っちゃうからね」


あとはWワークってことで

 何かのアルバイトとかパートを

 するんじゃないかな?

「アルバイトですか?」

「別にそんなに驚くことじゃないよ。

 エロアニメの仕事を始める前、

 一般作のアニメやゲームの仕事を

 していた時期は、それだけじゃ

 とても収入が足りないから、

 所属してた脚本家事務所の経理を

 手伝ったりしてたんだ」

「ははぁ……」


「エロアニメのシナリオを

 書き始めた後でも

 頼まれて専門学校の講師をしたり

 ラブホテルの掃除をしたり

 何だかんだ色々やってるね」

「ラブホテルの掃除ですか?

 なんでまた?」

「前々から興味はあったんだよね。

 どうせアルバイトをするなら、

 少しでもエロやシナリオに

 関わる仕事の方がいいじゃない?

 エロアニメシナリオを書く時に

 アルバイトで得た知識が

 役に立つかもしれないでしょ?


改めて思うのですが、賀島さんは

お仕事をしていない時でも

24時間365日、エロアニメのために

生きているような人なのでした。

しかも無理をしているわけではなく

『ドラゴンボール』で孫悟空が

超サイヤ人の状態を日常としたように

ごく自然に。


「……私はできることなら

 賀島さんにはなるべく長く

 エロアニメ業界で働いてほしいと

 心から思います」

「神様にそう言ってもらえるのは

 ありがたいな。

 でも業界には新陳代謝も必要だし

 その辺は流れに任せるよ。

 エロアニメ業界が栄えることが

 何より大事なんだしさ


「神様、何かまた元気の出る曲でも

 聞かせてほしいな」

「はいはい、何が良いでしょう」

「じゃあ『食戟のソーマ餐の皿』

 前期エンディングで『虚虚実実』


『食戟のソーマ』

附田祐斗さん原作・佐伯俊さん作画の

コミックスで、

2015年から2020年まで通算五期に

渡ってTVアニメ化されています。

『餐の皿』の前期は2017年の放映で

制作はJ.C.STAFFさん

監督は米たにヨシトモさん

シリーズ構成は

ヤスカワショウゴさんです。




「実は原作の作画の佐伯俊さんは

 エロマンガ家のtoshさんだって

 ウワサがあってね。

 toshさんの作品は

 『めんくい!』

 『ハーレムタイム』

  エロアニメ化されてるんだけど

 私、両方ともシナリオを書かせて

 もらってるのよ」

「ほほう」

「で、ちょっとご縁を感じて

 『食戟のソーマ』

 アニメはずっと見てたんだけど、

 OPとEDの中では

 この曲が一番好きなんだよね」


『守るべき正義をすり減らして

  勝ち取るものなどない』とか

 『従うべきは他でもない

  突き動かすほどの本能だ』とか

 すごく良いフレーズが

 いっぱいあるんだよね」


本日も長々とお聞きいただいて

ありがとうございました。

あまり頻繁に更新できず恐縮ですが

よろしければまた

私の話を聞きに来てくださいね。


佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
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