2ntブログ

#5 デンプシーロールとはその技単体にあらず

エロアニメの神様
03 /25 2022
……実は私、
少し反省しているのです。
エロアニメの神様を
名乗っておきながら、
ここのところエロアニメを
全く話題にしておりませんでした。

とは言え、
私自身まだエロアニメについて
分かっていないことも多いのです。

「……そんなわけで、
 また賀島さんに
 お話を伺いに来ました。
 今日はエロアニメの神髄について
 是非ご教授いただければと」
「……いきなりそんな大仰な話を
 聞かれても困るなー」
「無いんですか? 神髄」
「まぁ……
 神様がお気に召すか分からんけど
 ちょっとした概論くらいなら何とか」
「ぜひぜひ」

「エロアニメやAV、
 エロゲーとかは全部、
 【刺激】を得る為のメディアなのよ。
 お客さんは視覚や聴覚から
 エッチな刺激を受けて、
 同時にアソコを自分で刺激することで
 気持ち良くなりたいわけ」
「ふむふむ」

「ただここで問題なのは、
 人間っていうのは同じ刺激が続くと、
 それに対して慣れちゃうってこと」
「慣れちゃう?」
「真冬の寒さとか真夏日とか、
 最初はすごくキツいんだけど
 それが毎日続くと、
 段々と身体が順応して、
 慣れてくるじゃない?」
「それがエロアニメの【刺激】と
 何か関係するんですか?」

「Hシーンのクライマックスは、
 挿入してピストンして
 絶頂するまでじゃない?
 でもだからと言って、
 本編15分とか25分を
 全部挿入シーンにしちゃうと、
 今度はお客さんが
 飽きちゃうんだよね。
 例え体位を変えたり、
 キャラを変えたり、
 場所を変えたりしても」
「それは作画レベルを上げたり、
 動画枚数を増やしたりしても
 同じですか?」
「同じだと思う。
 問題なのは刺激の強さじゃなくて
 同じ刺激が続いちゃう
 ってことだから」

「そうなると
 考えるべきなのは……」
「エロアニメの刺激はね、
 音楽のクレッシェンドじゃないけど
 右肩上がりに
 段々強くしていくのが大事なの。
 言い換えるなら
 【昂ぶり】
 作っていくってことかな」
「昂ぶり……
 それは前戯シーンを
 充実させるということですか?」
「勿論それもあるけど、
 Hの前段階でも
 昂ぶりは表現できるかな……
 女戦士モノなら、
 戦いで痛めつけられて
 追い詰められる描写を高めるとか
 純愛ものなら、
 彼氏の部屋で
 Hまでのスキンシップの
 ドキドキ感を出すとか、
 集団レイプなら、
 男達に囲まれた所で
 ストリップさせて、
 羞恥心をより煽るとか……」
「なるほどなるほど」

「あと、Hシーンの後に
 もう一山エッチを足して
 昂ぶりを表現する手もあるよ。
 男に犯されて
 ボロボロにされて、
 もう終わりかと
 グッタリしてるとこに
 男の友達が複数やってきて
 輪姦されちゃうとか……」
「もうこれで終わりかな?
 とお客さんにミスリードさせて
 その後にクライマックスが
 来ることで
 サプライズ的な効果も
 あるんですね」

『けいおん!』12話でさ、
 ライブシーンの最後で
 『ふわふわ時間』
 を演奏した後、
 ムギちゃんがキーボード弾きだして
 みんなもそれに合わせて
 唯が『もう一回!』ってサビを
 リフレインする件があるじゃない?
 ……あーいうのってグッとくるよねー」

『けいおん!』は
かきふらいさんのコミックを
原作としたTVアニメで、
京都アニメーション制作・
山田尚子さんの監督作品です。
賀島さんが仰っているのは、
2009年に放送された
第12話『軽音!』の
ラストシーンのエピソードです。

アニメや漫画の例え話が出てくるのは
賀島さんがノッてきた証拠です。

「挿入シーンって言うのは、
 特撮とかロボットアニメとか
 プリキュアの
 必殺技に似てるのかもしんない」
「必殺技ですか?」
「必殺技は
 必ず無くちゃならない
 お約束なんだけど、
 シーンそのものは
 バンクだったりするじゃない?」

バンクシーンとは、特定のシーンを
別の部分で流用するシステムです。

「毎回同じバンクであっても
 ちゃんとカタルシスがあって、
 お客さんが喜んでくれるっていうのは
 その必殺技に入るまでに
 キチンと流れが盛り上がってる……
 昂ぶってるからなんだよね」
「なるほど」

「また漫画の例えになっちゃうけど
 『はじめの一歩』
 鴨川会長が言うじゃない。
 『デンプシー・ロールとは
  その技単体にあらず!!』ってさ」

『はじめの一歩』は
『週刊少年マガジン』で
1989年から連載され続けている
森川ジョージさんの
ボクシング漫画です。

賀島さんが仰っているのは
単行本26巻・第225話の一節になります。
主人公・幕之内一歩が
日本タイトル挑戦に向けて
合宿をしていた際、
ジムの鴨川会長が
必殺技・デンプシーロールについて
こう示唆するのです。

『デンプシー・ロールとは
 その技単体にあらず!!』
『どんな相手をも後退させる下準備から
 技への連係、そしてトドメ
 それら全てが揃った時――
 この技は完成に近づく!』

そして幕之内一歩は
王者・千堂武志とのタイトル戦で、
肝臓打ち
ガゼルパンチ
デンプシー・ロールの三段攻撃で
見事にチャンピオンベルトを
奪取したのでした。

話は色々と脱線しましたが、
また少しエロアニメの世界に
詳しくなれたような気がしました。

「最後にお聞きしたいのですが、
 賀島さんは
 エロアニメシナリオを書く際、
 【興奮】という言葉を
 【昂奮】と書かれていますよね?
 これは何か
 意味があるんですか?」
「ああ、
 本当は常用外の書き方なんだけどさ、
 気分的にこっちが
 しっくり来るから使ってるんだ。
 【昂ぶり奮い立つ】って方が
 エッチシーンに合ってるかなーって」
「ほほう」
「ま、シナリオの表記が
 お客さんの目に
 直接触れるわけじゃないし
 それでこっちが
 気分よく書けるんなら
 それでいいじゃない?」

人間の男性の大半は、
女性の身体や性的な行為に
興味があるのでしょう。
エッチなシーンを描くということは、
その本能に基づいた、
ある意味自然な行為なのだと
私は思っていました。

しかし、
こうして賀島さんのお話を聞いていると
誰しもが関心がある話題で
お客さんを喜ばせるためには、
常にお客さんの一歩先を
進む必要があるわけで、
それはそれで
とても大変なことなのだと、
そんなことを改めて感じました。

佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
エロ小説のお仕事、随時募集中!
メールフォームまたはツイッターの
DMにてお問合せ下さい