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#13 遅えよ、バカ

エロアニメの神様
06 /28 2022
アニメに出演される役者さんには
【ランク制】があります。
役者さんが事務所に所属する際、
最初は【ジュニア】と呼ばれる
カテゴリーになります。
事務所のホームページでは
【準所属】と表記されたりしますね。
そこからキャリアを積んで
正式な所属になるとランクが付いて
ギャランティもグンと良くなります。

これは役者さんにとっては
大変良いことなのですが、
制作側にとっては予算が増えること
になりますので、なかなか頭の痛い
問題になります。

「エロアニメの場合、
 ランク付きの役者さんを使うなら
 やっぱり女性キャストが
 優先されるかな。
 ゲーム原作だと原作とキャストを
 揃えるケースが多いからさ、
 その場合はランクとか考えずに
 キャスティングされるしね」

そんなこんなの事情があって
エロアニメの男性キャストは
ジュニアの役者さんが務めるケース
が多いようです。

しかし何事にも例外はあります。

「そうだね。例えば
 ピンクパイナップルさんの
 『遺作』『臭作』『鬼作』
 所謂おやぢシリーズとか、
 男性キャラの個性が凄く強くて、
 キャストさんにも相当な力量が
 要求される場合は、ランク付きの
 役者さんにお願いしたりするよ
「なるほど」

「あとは、原作者さんの強い要望が
 あったりとかね。
 原作の段階からこのキャラは
 このキャストさんのイメージなので
 何とかお願いします。
 もしギャラが高いようなら、
 私が出しますので!
 ……って原作者さんにお願いされた
 ケースが前にあったよ」
「その時は本当に原作者さんが
 出演料をお支払いしたんですか?」
「いや、流石にそこまでは
 お願いしなかったよ。
 原作者さんの熱い気持ちは
 よく分かったから、
 メーカーさんと制作会社さんで
 何とか調整してくれたね」

その男性キャストさんは
この当時からTVアニメの主演を
何回もされていたような
有名な役者さんだったそうです。

「もちろんこういう場合、名前を
 変えて出演されるんだけどさ。
 ネットで色々と噂される昨今、
 よく出演してくれたなーって
 正直ありがたく思ったね」
「有名な役者さんが出演して下さる
 のはやはり嬉しいことですか?」
有名だから嬉しいわけじゃないよ?
 名前を変えてるから、宣伝効果は
 期待できないんだし。
 ただ、有名ってことはやっぱり
 お芝居が上手ってことだからね。
 自分の書いたシナリオを
 上手な役者さんに演じてもらえる
 のは素直に嬉しいじゃない?

「原作者さんは始めから
 イメージしてたんだろうだけど
 そのキャラはよく見ると、
 とあるTVアニメのキャラに
 見た目も口調も似てたんだよね。
 で、そのTVアニメのキャラを
 演じていたのが、
 件の男性キャストさんでさ」

「だからこっちも少しそのキャラを
 意識してシナリオを書いてみたり
 したんだけどね、
 その役者さんが凄かったのは、
 モデルになったTVのキャラとは
 キチンと演じ分けて、
 且つ今まで演じたキャラとも
 全然別の、オリジナルのお芝居を
 用意してきてくれたんだよね

「本編の収録が終わった後でも
 男性キャストが少なかったから
 ガヤもやりますよ?
 って自分から言ってくれてね。
 他のジュニアのキャストを纏めて
 収録に協力してくれたんだよね。
 勿論、何パターンか録ったガヤは
 全部違うパターンのお芝居でさ。
 本編でメインだった男性キャスト
 がガヤで参加してるなんて、
 もし言われても聞き分けられない
 くらいのレベルだったよ」

俺達は楽しんでやってるけどさ。
 傍から見れば、エロアニメは
 やっぱり日陰の仕事なわけだよ。
 それに対して、分け隔てなく
 一生懸命取り組んでくれたって
 言うのが何より嬉しくてねぇ……

私は賀島さんのお話を聞きながら、
エロアニメが【日陰のお仕事】なんて
思われないような、そんな時代が
早く来てほしいものだと
強く願わずにいられませんでした。

「……神様、また一曲歌ってよ」
「はいはい、何にしましょう?」
『サムライフラメンコ』
 後期エンディングテーマで
 ミネラル★ミラクル★ミューズの
 『フライト23時』

『サムライフラメンコ』
2013年に放送されたTVアニメで
監督は大森貴弘さん
シリーズ構成は倉田英之さん
制作はマングローブさんでした。


「何かこの曲に
 思い出があるんですか?」
「この曲にってわけじゃないけど
 『サムライフラメンコ』
 本編からエンディングへの導入が
 いつも凄く秀逸でね。
 特に好きなのが
 16話の『さすらいのヒーロー』
 のラストシーンなんだ」
「どんなシーンなんですか?」

「主人公が指名手配されて、日本中
 から追いかけられている話でさ。
 友人の元に行きたいんだけど、
 迷惑を掛けそうだから行けない。
 散々街を彷徨って迷った末に、
 ボロボロで友人の家を訪ねるの。
 するとその友人は、主人公のこと
 を何も咎めずに
 『……遅えよ、バカ
 って迎え入れるんだよね」
「主人公は日本中から追われている
 身の上なのに、その友人だけは
 彼を信じてずっと待っていたって
 ことが短い一言に凝縮されてるの」

「このシーンの途中から
 エンディングの前奏がかかって
 『……遅えよ、バカ』で
 エンディングに入るタイミングが
 最っ高なんだよね……」

賀島さんのリクエストは
大抵がアニメか特撮の曲なのですが
主題歌よりもエンディングの方が
多くリクエストされる気がします。
その辺りもまた機会がありましたら
ゆっくり伺ってみたいと思います。

#12 聖オルキス学園の行方

エロアニメの神様
06 /11 2022
さてさて、
久々の更新になってしまいました。

私、賀島さんに同行して
エロアニメのアフレコ
何度かお邪魔したのですが、
ちょっと気になった事がありました。

「……賀島さんは、
 役者さんの演技に対して
 意見を述べたりしないんですね?」
「うん。
 ライターさんによって
 方針の違いはあると思うけど、
 私はお芝居に関しては
 監督と音響監督にお任せしてる。
 そりゃあアフレコに立ち会って
 色々と思う時はあるけどさ、
 ライターがそれを言うのは
 ちょっと越権じゃないかなって」
「なるほど」
「それに、お芝居には
 絶対の正解がある訳じゃないし、
 最終的には好みだったりするし、
 スタジオで全員がそんなこと
 言い合ってたら収録終わんないよ」

「では、ライターさんが
 アフレコに立ち会う際の役割とは
 何でしょう?」
「原作の設定とズレが無いかどうか
 チェックしたりしてるね。
 劇中の地名とか組織名とか武器や
 技の名前が合ってるかどうか」
「あとは呼称も注意するね。
 A子さんがB子さんを呼ぶとき、
 【B子さん】なのか【B子ちゃん】
 なのか【Bちゃん】なのか、
 その辺が原作と違ってないか
 口調も含めてチェックしてる」
「そういうのはシナリオ執筆の段階
 でチェックされているのでは?」
「もちろんそうだけど、
 シナリオから絵コンテにする場合
 アレンジされることもあるし、
 単純にシナリオから絵コンテ、
 さらにそこからアフレコ台本と
 転記される時に誤植されることも
 あるわけだし」
「そうなんですか」
「ゲーム原作の場合、キャストが
 共通だったりするから役者さんが
 分かってる場合もあるけど、
 まあ一応念のためにね」

「あとはイントネーションの違いも
 音響監督さんが修正しなかったら
 指摘したり、別撮りのモノローグ
 やガヤが多い作品だと、撮り漏れ
 が無いかどうかチェックしたりも
 するかな……」
「要するに、
 お芝居以外の細かい部分について
 確認してフォローしてる感じ」
「なるほどなるほど」

「……ま、でも実はこれは、
 ライターの【仕事】ってわけじゃ
 ないんだけどね」
「はい?」
「デビューしたての頃
 師匠に言われたんだよね。
 執筆した作品のアフレコには
 必ず行けってさ」
自分が書いたセリフを役者さんが
 どう演技してるのか?
 自分が書いたシナリオがイメージ
 通り映像化されているのか?
 アレンジされたとしたら、
 それは一体何故なのか?
 そういうのを見て考えること、
 役者さんや監督さん、
 演出家さんと話をすることは
 絶対に良い勉強になるからって」
「だから、アフレコには仕事として
 立ち会っているわけじゃなくて、
 勉強させてもらってる……
 【見学】って感じだね」
「最近はコロナがあるから
 スタジオの人数を増やしちゃうのは
 心苦しいんだけど……
 OKしてくれる現場は
 必ず見学するようにしてるよ」
「なるほどなるほど」

「……なーんて偉そうに語ってるけど
 実は最近、やらかしちゃった失敗が
 あってねー……」
「あらららら、何です?」
「前にプロットを紹介した
 『聖奴隷学園2』なんだけどさ、
 先月後編のアフレコがあったのよ」
「はいはい」
「この作品の舞台は
 【聖オルキス学園】なんだけど、
 役者さんがこれを
 【せいオルキス学園】って
 台詞で呼んでたの」
「原作では【セントオルキス学園】
 って呼んでた気がしたんだけど、
 スタジオではそこまでハッキリ
 調べられなかったから、
 一応【セントオルキス学園】の
 バージョンも収録してもらって、
 正解の方をダビングで合わせて
 もらおうと思ってたの」

ちなみにダビングというのは、
アフレコの後で台詞の調整や加工を
したり、効果音と音楽を合わせたり
する作業だそうです。

「で、仕事場に戻って調べたら、
 原作ではやっぱり
 【セントオルキス学園】って
 呼んでたのよ」
「それなら
 指摘して良かったじゃないですか
 キチンと正解のバージョンも
 収録していたわけですし」
「……ところがねー、
 問題はここからでさ。
 実は前編でも【聖オルキス学園】
 って台詞があったんだけど、
 この時は【せいオルキス学園】
 って呼んでたのを気づかずに、
 そのまま通しちゃってたのよ」
「あらららららら?」
「前編はとっくに完成して、
 商品として販売されちゃってるし
 今さら修正はできないわけよ」
「それは困りましたね」
「監督やプロデューサーさんとも
 話し合ったんだけど、
 前編と後編で呼び方が
 変わっちゃう方が不自然だから
 アニメでは【せいオルキス学園】
 に統一しようって事になったの」
「ははぁ、なるほど……」
「学園名を呼んだのは前編も後編も
 それぞれ一箇所だけだったし、
 各所にも報告して承認して頂けた
 んだけどさ……
 前編のアフレコにも
 ちゃんと立ち会ってはずなのに、
 全然気づいてなかったのよ。
 いやはや本当に申し訳ない!

ここで謝っても
お客様に届くかどうか分かりませんが
とりあえず、
本編の売上は好調とのことですので
興味がありましたら、皆様ぜひ。

ご紹介しておきますね。

佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
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