#13 遅えよ、バカ
エロアニメの神様アニメに出演される役者さんには
【ランク制】があります。
役者さんが事務所に所属する際、
最初は【ジュニア】と呼ばれる
カテゴリーになります。
事務所のホームページでは
【準所属】と表記されたりしますね。
そこからキャリアを積んで
正式な所属になるとランクが付いて
ギャランティもグンと良くなります。
これは役者さんにとっては
大変良いことなのですが、
制作側にとっては予算が増えること
になりますので、なかなか頭の痛い
問題になります。
「エロアニメの場合、
ランク付きの役者さんを使うなら
やっぱり女性キャストが
優先されるかな。
ゲーム原作だと原作とキャストを
揃えるケースが多いからさ、
その場合はランクとか考えずに
キャスティングされるしね」
そんなこんなの事情があって
エロアニメの男性キャストは
ジュニアの役者さんが務めるケース
が多いようです。
しかし何事にも例外はあります。
「そうだね。例えば
ピンクパイナップルさんの
『遺作』『臭作』『鬼作』
所謂おやぢシリーズとか、
男性キャラの個性が凄く強くて、
キャストさんにも相当な力量が
要求される場合は、ランク付きの
役者さんにお願いしたりするよ」
「なるほど」
「あとは、原作者さんの強い要望が
あったりとかね。
原作の段階からこのキャラは
このキャストさんのイメージなので
何とかお願いします。
もしギャラが高いようなら、
私が出しますので!
……って原作者さんにお願いされた
ケースが前にあったよ」
「その時は本当に原作者さんが
出演料をお支払いしたんですか?」
「いや、流石にそこまでは
お願いしなかったよ。
原作者さんの熱い気持ちは
よく分かったから、
メーカーさんと制作会社さんで
何とか調整してくれたね」
その男性キャストさんは
この当時からTVアニメの主演を
何回もされていたような
有名な役者さんだったそうです。
「もちろんこういう場合、名前を
変えて出演されるんだけどさ。
ネットで色々と噂される昨今、
よく出演してくれたなーって
正直ありがたく思ったね」
「有名な役者さんが出演して下さる
のはやはり嬉しいことですか?」
「有名だから嬉しいわけじゃないよ?
名前を変えてるから、宣伝効果は
期待できないんだし。
ただ、有名ってことはやっぱり
お芝居が上手ってことだからね。
自分の書いたシナリオを
上手な役者さんに演じてもらえる
のは素直に嬉しいじゃない?」
「原作者さんは始めから
イメージしてたんだろうだけど
そのキャラはよく見ると、
とあるTVアニメのキャラに
見た目も口調も似てたんだよね。
で、そのTVアニメのキャラを
演じていたのが、
件の男性キャストさんでさ」
「だからこっちも少しそのキャラを
意識してシナリオを書いてみたり
したんだけどね、
その役者さんが凄かったのは、
モデルになったTVのキャラとは
キチンと演じ分けて、
且つ今まで演じたキャラとも
全然別の、オリジナルのお芝居を
用意してきてくれたんだよね」
「本編の収録が終わった後でも
男性キャストが少なかったから
ガヤもやりますよ?
って自分から言ってくれてね。
他のジュニアのキャストを纏めて
収録に協力してくれたんだよね。
勿論、何パターンか録ったガヤは
全部違うパターンのお芝居でさ。
本編でメインだった男性キャスト
がガヤで参加してるなんて、
もし言われても聞き分けられない
くらいのレベルだったよ」
「俺達は楽しんでやってるけどさ。
傍から見れば、エロアニメは
やっぱり日陰の仕事なわけだよ。
それに対して、分け隔てなく
一生懸命取り組んでくれたって
言うのが何より嬉しくてねぇ……」
私は賀島さんのお話を聞きながら、
エロアニメが【日陰のお仕事】なんて
思われないような、そんな時代が
早く来てほしいものだと
強く願わずにいられませんでした。
「……神様、また一曲歌ってよ」
「はいはい、何にしましょう?」
「『サムライフラメンコ』の
後期エンディングテーマで
ミネラル★ミラクル★ミューズの
『フライト23時』」
『サムライフラメンコ』は
2013年に放送されたTVアニメで
監督は大森貴弘さん
シリーズ構成は倉田英之さん
制作はマングローブさんでした。
「何かこの曲に
思い出があるんですか?」
「この曲にってわけじゃないけど
『サムライフラメンコ』は
本編からエンディングへの導入が
いつも凄く秀逸でね。
特に好きなのが
16話の『さすらいのヒーロー』
のラストシーンなんだ」
「どんなシーンなんですか?」
「主人公が指名手配されて、日本中
から追いかけられている話でさ。
友人の元に行きたいんだけど、
迷惑を掛けそうだから行けない。
散々街を彷徨って迷った末に、
ボロボロで友人の家を訪ねるの。
するとその友人は、主人公のこと
を何も咎めずに
『……遅えよ、バカ』
って迎え入れるんだよね」
「主人公は日本中から追われている
身の上なのに、その友人だけは
彼を信じてずっと待っていたって
ことが短い一言に凝縮されてるの」
「このシーンの途中から
エンディングの前奏がかかって
『……遅えよ、バカ』で
エンディングに入るタイミングが
最っ高なんだよね……」
賀島さんのリクエストは
大抵がアニメか特撮の曲なのですが
主題歌よりもエンディングの方が
多くリクエストされる気がします。
その辺りもまた機会がありましたら
ゆっくり伺ってみたいと思います。
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