2ntブログ

#58 みんなのかお

エロアニメの神様
10 /30 2023
『みんなのかお』っていう
 動物写真絵本があるんだよね。
 福音館書店さんの発行で
 写真が佐藤彰さん
 文章が戸田杏子さん
 初版が1994年なんだけどさ」
「動物写真絵本……ですか?」
「そうそう。この本はね、
 同じ種類の動物の顔を
 全国の色んな動物園に行って
 撮影した写真絵本なんだよ。
 実際のサンプルページを
 見てもらった方がいいかな」

ゴリラ

ライオン

「ははぁ……なるほど」
「エロアニメの仕事を始める前、
 まだ若かった頃の話なんだけどさ
 あるアニメ監督さんが
 役者さん向けの
 ワークショップをされててね、
 ちょっと見学させてもらった時に
 この絵本の紹介をしてたんだ」

「ずらっと並んだ
 動物たちの【顔】を見てみると
 同じ種類の動物なのに
 それぞれの顔は全然違うんだよね
「それはそうですよ。
 同じ日本人でもそれぞれの顔は
 全然違うじゃないですか。
 当たり前のことでしょう?」
「言われてみるとそうなんだけど
 これは人間のエゴなのかなぁ……
 同じ種類のゴリラやライオンなら
 顔も大体同じなんじゃないかと
 当時は思ってたんだよね」

「そのアニメ監督さんは
 なぜこの本を紹介したんでしょう?」
物語の中でそれぞれのキャラは
 出身とか性別とか職業とか、
 色々なカテゴリーがあるけれど
 そういったモノに囚われすぎず
 そのキャラクターの
 【個性】をよく見てほしい
 ……っていうお話をされてたよ」
「ほほう」

「これは役者さんだけじゃなくて
 ライターにも参考になる話だから
 よく覚えてるんだけど、
 キャラクターを表現する時に
 個人の性格じゃなくて
 カテゴリーに囚われちゃうことって
 結構よくあるんだよね」
「例えば、
 お祖父ちゃんって言われると皆、
 『わしは~~~なんじゃ』
 って口調になっちゃう。
 力士って言われるとすぐに
 『はっ、ごっちゃんです』
 とか言わせちゃう。
 警察官って言われると
 『本官は~~~であります』
 みたいな口調になっちゃう。
 よく考えてみたら、
 お祖父ちゃんや力士や警察官が
 全員そんな口調なわけないのにさ
「確かにそうですね」

「土佐出身のキャラっていうと
 『わしは~~~ぜよ』
 九州出身のキャラっていうと
 『おいどんは~~ですたい』
 みたいな口調にして、
 それを個性だと思いがちだけど
 それはあくまでキャラクターの
 カテゴリー分けであって
 個性を表現するのとは
 また別の話なんだよね

これはキャラクターデザインにも
 言える話じゃないかな?
 ヤクザのキャラが全員、
 サングラスに頬傷だったら変だし
 お祖父ちゃん、お祖母ちゃんは
 誰でも杖を突いてる訳じゃないし
 読書好きの女子中〇生が全員
 メガネ掛けてたら変だもんね」

「要するにさ、
 世間のイメージに囚われすぎると
 シナリオでもお芝居でも何でも
 テンプレート化されちゃって
 面白くなくなっちゃう……
 っていうことなんだと思うよ」
「まぁもちろん、
 モブとか敢えてキャラクターを
 テンプレート化させることも
 あるけどね」

「これはエロアニメにも
 あてはまるお話ですか?」
「うん、そうだね。
 二次元エロメディアの場合、
 同じ作品の中では
 キャラクターの描き分けをすごく
 しっかり意識するのよ。
 お姉ちゃんキャラとか妹キャラ、
 お嬢様キャラにメガネっ子。
 スポーツ少女にヤンキー少女、
 ツンデレキャラに無口キャラ、
 巨乳にロリにムチムチに尻デカ、
 女王様にマゾヒストに淫乱娘、
 考えだせばキリがないくらい
 キャラのカテゴリーがあるからね」
「ふむふむ」
「ところが……
 やっぱり気をつけてないと
 口調もデザインもお芝居も、
 どこかで見かけたようなキャラ、
 他の作品と似通ったキャラに
 なっちゃうのよ。
 それぞれの作品には
 独自の設定があるわけだけど、
 二次元エロメディアは
 一作完結ものが多くて
 作品数も多くなるからどうしてもね」

「そうなってしまいそうな時、
 賀島さんはどうされてるんですか?」
「そうねぇ……
 プレイ内容を描き分けるのは
 まあ当然なんだけど、
 その次は、
 竿役の男との関係を考えるかな。
 そいつのことを好きか嫌いか、
 好きだとしてもこのシーンでは
 どの程度の距離感・進展度なのか
 それによって反応は違うしね」
「あとは、そのキャラクターの
 Hそのものに対する開発度だね。
 セックスが好きか嫌いか、
 感じやすくなってるのかどうか
 そういうことを意識したりするよ」
「そのほか、周りの状況もあるな。
 人目があるかないか、
 バレそうなのかどうなのか、
 二人っきりで落ち着ける場所とは
 反応が違ってくるからね」
「なるほどなるほど」

「まぁでも、
 キャラクターのテンプレート化
 っていうのは、物語の創作上、
 どうしても陥りやすい問題なのよ。
 私も紹介された『みんなのかお』を
 個人的に購入して本棚に並べてさ、
 いつも意識するようにしてるわけ」

「さてさて、
 では本日のリクエストですが……」
「今日は音楽じゃなくて、
 10月13日から公開されている
 映画『春画先生』を紹介したいな」

『春画先生』
原作・脚本・監督が塩田明彦さん
主演が内野聖陽さん
ヒロインが北香那さん
共演が柄本佑さん、安達祐実さん、
白川和子さんです。

「変わり者の春画研究家と
 その弟子でしっかり者のヒロインが
 登場する物語なんだけどさ、
 最初は細野不二彦さんの
 『ギャラリーフェイク』みたいに、
 アートとしての春画そのものが
 テーマになるのかと思ったら
 ちょっと違うのよ」
「ほほう」
「ヒロインの弟子は春画先生を
 好きになっちゃうんだけど
 先生には亡くなった奥さんが居て
 その双子の姉が現れるんだよね」
三人の関係はすっごく肉感的で
 情欲まみれで生々しいんだけど、
 不思議と嫌な感じはしなくて、
 ちょっと笑えるくらいなんだよ。
 各々が欲望に対して凄く素直で
 純粋だからじゃないかな?
 その辺が春画そのものの
 魅力に繋がると思うんだよね


「エロスがテーマの映画は
 なるべく観るようにしてるんだけど
 ただエッチなシーンが多いだけで
 映画として詰まらないような作品も
 正直いっぱいあるんだよ。
 そんな中でこの作品は
 凄く斬新で面白かったよ。
 是非是非お勧めしたい一本だね」

長々とお聞きいただきまして
どうもありがとうございます。
毎月10日・20日・30日前後に
更新できるよう頑張りますので
よろしければまた
私の話を聞きに来てくださいね。

コメント

非公開コメント

佐和山進一郎

エロアニメ・エロゲームのシナリオ
エロ小説のお仕事、随時募集中!
メールフォームまたはツイッターの
DMにてお問合せ下さい