#11 余裕なんてないんだよ
エロアニメの神様前回、
エロアニメのプロット制作について
賀島さんにお話を伺いましたが、
今回はその補足というか、
オマケです。
「……いや、プロットの話してたら
原作に対するアプローチの話が
意外と多くなっちゃってさ。
あんまり長くなってもアレなんで
止めといたんだけど、
もう少し補足しておこうかなと」
「そう言えば、
賀島さんが書かれた
エロアニメのシナリオは、
大半が原作付きの作品ですよね?」
「300本以上エロアニメのシナリオ
を書いてきたけど、コミックとか
ゲーム原作じゃない作品なんて
10本も書いてないと思うよ」
「原作のキャラクターや世界観を
生かしてオリジナルのエピソード
を書いたのは結構あるけどね」
「そうなんですか」
「エロアニメの黎明期には結構あった
んだけどね、オリジナル企画。
最近はほとんど聞かないなー……
エロアニメはTVアニメより
オリジナルの比率は低いと思うよ」
「賀島さんはオリジナル企画を
もっと増やしたいと思います?」
「ん~~……興味はあるんだけど
本音を言うとちょっと怖いかな」
「怖い?」
「キャラクターもシチュエーション
も世界観や設定もエッチの内容も
全部オリジナルとなると、
どうしても自分の個性というか、
性癖が滲み出ちゃうじゃない?」
「はいはい」
「そういう作品が多くなると、
何時の間にか似通った作品ばかり
書いちゃったりとか、独りよがり
の作品になっちゃったりとか……
そういうのが怖いかな」
「ははぁ……なるほど……」
「もちろん、オリジナルの企画を
思いつく時もあるんだけどさ。
そういうのは商業作品じゃなくて
同人作品として作ってみたり、
小説としてノクターンノベルズに
投稿したりしてるよ」
ノクターンノベルズというのは、
『小説家になろう』の中で
18歳以上の男性向け官能小説を
専門とした小説サイトです。
ちなみに、賀島さんの作品一覧は
コチラになります。
同人作品の方は、
コチラで販売されているそうです。
「……と言うことは、
賀島さんにとって原作とは、
とても大切な存在なんですね?」
「そうだね。そもそもまず、
売れてる原作コミックや同人誌、
エロゲーがあって、
『じゃあそれをアニメ化しよっか?』
ってことで初めて企画が動きだす
わけだからね」
「プロデューサーによっては、
とにかく良い原作を取ってくる事
が第一で、中身に関しては監督や
現場にお任せって人もいるくらい」
「ははぁ……また極端ですねぇ」
「しかしそうなると、
エロアニメのシナリオや
キャラクターデザインも原作元の
ゲームメーカーさんや漫画家さん
に担当して頂いた方が良い……
ということにはなりませんか?」
「あー、ところがねぇ……
そうはならないと思うんだよね」
「どうしてでしょう?」
「例えばシナリオで言うと、
15分とか25分の尺でどの位の
お話が入るのかっていう感覚が
原作者さんには分かりづらいと
思うんだよね。
登場人物があんまり多いと
キャスト費も膨らんじゃうし、
場所の移動が多すぎると設定が
多く必要になってくるし……」
「なるほど」
「キャラクターデザインも、
アニメで動かすことを考えると
それなりに線を少なくして整理する
ことが必要になってくるし、
そういうのはやっぱり、
現場の感覚が必要だと思うんだ」
「現場の感覚ですか……」
「もっと分かりやすいのは
キャスティングかな?
例えばコミックの原作者さんに
希望のキャストを聞いちゃうと、
有名でギャラのランクも高い
役者さんばかりを挙げてきちゃう
と思うんだよ」
「はいはい」
「でも実は、音響監督さんの方が
何倍も色んな役者さんをご存知で
その中にはきっと、
そんなにギャラが高くなくて、
その役にピッタリな役者さんが
いらっしゃるはずなんだ」
「なるほど」
「だからこういう場合、とりあえず
現場からキャスト候補を提案して、
サンプルボイスや既存の作品を
聞いてもらった上で、原作者さん
に意見をもらう……
というのが正しい流れだと思うよ」
「……で、やっと前回の話に
繋がってくるんだけど、
エロアニメでプロットを急ぐのは
検討の叩き台になるプロットは、
まず現場から提案する必要がある
からなんだよね」
「勿論、提案したプロットに対して
原作者さんから注文があれば、
どんなことでもキチンと前向きに
対応するんだよ?」
「決して、原作元を蔑ろにしたり、
現場が好き勝手にやりたいとか
そういうことではないんですね?」
「そうそう、繰り返しになるけど、
まず売れてる原作があって、我々
現場は、それを使わせて貰ってる
立場なんだから」
「現場のスタッフは、
エロアニメの尺と予算の範囲で
原作のエロいところを引き出して
アニメ向きにアレンジする……
っていうのがあるべき姿なんだと
思ってるけどね」
「なるほど……よく分かりました」
「……何だか真面目な話ばっかり
しちゃったかな?
神様、良かったらまた
アニソンとか歌って聞かせてよ」
「はいはい、いいですよ」
「じゃあね……『猫物語(白)』の
エンディングで、春奈るなさんの
『アイヲウタエ』をお願い」
『猫物語(白)』は西尾維新さんの
小説を原作とした作品で、
<物語>シリーズのセカンドシーズン
として2013年7月に放送されました。
制作はシャフトさん、
脚本は中本宗応さんで、
監督は板村智幸さんです。
「……おや、
こちらのミュージックビデオは
TVアニメのエンディングとは
アレンジが違うようですが?」
「うん、そうなんだけどね。
こっちの方がキャラの心情に
合ってる気がして好きなんだよ」
ホントはね ずっと君と
二人だけが よかったんだ
『純粋なアイのコトバ』
笑わないでよ ねぇ
きっとまた そんな君を
『諦めてやるもんか』って
必死に答えを探す
馬鹿みたいだね あぁ
「ってサビがあってさ」
目と目を合わせたら
怖がらずに ほら
話してみよう
自分だけの 心を
溜め息をついて
さぁリセットしよう
「って締めるのがTV版なんだけど」
余裕なんてないんだよ
迂闊に話せない
溜め息をついて
さぁリセットしよう
話してみよう
自分だけの 心を
「この流れの方が切ない心情が
伝わる気がするんだよね……
どうだろう?」
この辺はあくまで個人の好みのお話
なので、私には何とも言えません。
「<物語>シリーズの
セカンドシーズンはさ、
阿良々木暦じゃなくて、
それぞれのメインヒロインの視点
で描かれるのが特徴なんだよね。
『猫物語(白)』は
羽川翼の物語なんだけど、
彼女の失恋とアイデンティティの
確立がすごくよく描けてて、
ラストに登場する阿良々木暦が
またカッコいいんだよねぇ……」
公式な配信ではないのですが、
作品のPVがありましたので
こちらもご紹介したいと思います。
ではではまた、お時間ありましたら
私の話を聞きにきて下さいね。
コメント