#19 僕らは今のなかで
エロアニメの神様先日の出来事から
私はずっと考えていたのです。
AV新法の成立をはじめ、
我々エロメディアに対する
昨今の世間からの誹謗中傷、
謂れの無い迫害に対して、
我々は起つべきではないかと。
私の姿や声は普通のヒトには
認識できないようですが、
賀島さんのお力を借りれば
出来ることは沢山あると思うのです。
いやむしろ、
賀島さんと私が出会った意味は、
このような時代を変えるため
なのではないのでしょうか?
「……よしなよ、そんなこと」
あらららら?
何ともつれないお言葉。
「AV新法の件は門外漢だから
詳しくは語れないけどさ、
少なくとも自分の仕事では、
関係ない部外者の意見で
シナリオを変更したケースは
今まで一回も無いんだよ」
「こないだのアフレコだって
結局収録そのものは無事に
終わったでしょ?」
「しかし私はエロアニメの神様として
エロアニメに理解の無いヒトに
賀島さんや皆さんのお仕事を
ぜひ認めてほしいと思うのです。
……いけないことでしょうか?」
「いけなくはないと思うけど……
う~ん……何て言うかさ……
例えば我々が作っているのが
【エロアニメ納豆】だとするとさ」
「はい!?」
「……いやまぁ、中年のおじさんが
大好きな例え話なんだけどさ」
「我々が作っているのが
【エロアニメ納豆】だと思ってよ。
で、その商品はスーパーに並んで
販売されてるわけ」
「はい」
「そこに納豆嫌いのお客さんが来てさ
『私は納豆が嫌いだから、
こんなもの売らないでくれ!』
……って言ったって、スーパーは
エロアニメ納豆を販売するのを
止めたりしないと思うんだ」
「そうでしょうとも」
「万が一、エロアニメ納豆から
独特の匂いが漏れてて、スーパー
の売り場全体に広がってる……
とかだったら話は別だけど、
そんなことはないわけだしね」
「一部の納豆嫌いのお客さんが
自分の好みを押しつけてこられても
困ってしまいますよね」
「んじゃ、もしそこで店員さんが
エロアニメ納豆が嫌いなお客さんに
『エロアニメ納豆美味しいですよ
一個サービスしますから、
ぜひ食べてみて下さい!』
……とか言ったらどうだろう?」
「それは……迷惑ですよね……」
「やっぱりこれも、
【自分の好みを押しつけてる】
ってことになるんじゃないかな?」
「むむむむむ……」
「そもそも大事なのは、
エロアニメ納豆が【商品】として
スーパーに置いてある事なんだよ。
例えそれを嫌いな人が
あーだこーだ言ったって
商品として市場に出続けてるって
ことは、それを買ってくれる
お客さんがいるってことで、
一定の需要があるってことだよ」
「なるほど」
「だから、
我々製造者が考えるべきは
嫌いな人にどうこうじゃなくて
【エロアニメ納豆】を好きで、
買い続けてくれているお客さん
のために、より美味しい納豆を
頑張って作り続けていくってこと
じゃないのかな?」
賀島さんのお話に
私は返す言葉がありませんでした。
「神様は、
エロアニメの神様なんでしょう?」
「はい」
「それならもっと、エロアニメに
自信と誇りをお持ちなさいよ」
「……教えを説くのですか?
ヒトである貴方が、
神であるこの私に?」
私がちょっと不満げに答えると、
賀島さんはニヤッと笑って言いました。
「……まぁ一応、エロアニメに
関しては先輩だからさ」
どうやら私の見識不足だったようです。
今日は先輩からのありがたいお話で
勉強させていただきました。
「……ねぇ神様、また一曲聞かせてよ」
「はいはい、何にしましょう?」
「『ラブライブ!』
第一期のオープニングで
『僕らは今のなかで』」
『ラブライブ!』第一期は
2013年に放送されたTVアニメで
制作はサンライズさん
監督は京極尚彦さん
シリーズ構成は花田十輝さんです。
「この曲はさ、TVサイズで聞くのが
好きなんだよね。最後のとこ、
『僕らは今のなかで』
ってフレーズと、
『輝きを待ってた』
ってフレーズは、
繋がってた方が自然に聞こえてさ」
ではでは、リクエスト通り
TVサイズでお聞かせしましょう。
賀島さんはそれ以上
何も語りませんでしたが、
この曲をリクエストしたのは、
サビの歌詞を私に聞かせたかったから
ではないかと、そんな気がしました。
『それぞれの好きなことを
信じていれば
ときめきを抱いて進めるだろう』
これからは私も、
エロアニメのことをもっともっと
信じてみようと思います。
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